• English
  • Japanese

研究内容

公募研究

公募研究 03(平成22年度採択):
量子ドットと超伝導体の混合量子系における量子コヒーレンス理論

研究代表者/森 道康 日本原子力研究開発機構・副主任研究員

量子ドットを介して流れる超伝導電流を、量子ドット内の電荷状態を制御することで反転させる実験が成功している。ゲート電極により量子ドット内の電子数が制御され、電子数が奇数の場合と偶数の場合でジョセフソン電流の向きが反転する。この現象は、量子ドット内における強い電子間斥力が起源となっており、電流の反転は電子というフェルミ粒子の交換関係に伴う負符号がそのまま巨視的物理量に現れている。つまり、量子ドットの電荷やスピンという量子力学的状態が、超伝導体の位相という巨視的物理量に現れたと言える。

このように、量子ドットはゲート電極などを用いた電子状態の制御が可能であり、微視的および巨視的量子コヒーレンスを観測する上で理想的な舞台である。電子のスピン自由度を用いて新機能の発現を目指すスピントロニクスの研究が盛んになっている現状を考えると、量子ドットの電荷やスピン状態を制御して量子コヒーレンスを制御することが現実的な状況になっている。

本研究では、複数の量子ドットの電子スピン状態と超伝導体の融合した量子系を考える。そして、(1)量子ドットにおけるスピン状態という微視的量子コヒーレンスと、ジョセフソン電流という巨視的量子コヒーレンスを、相互に観測・制御する方法を提案する。特に、平行配置された二重量子ドットを介して二つの超伝導体が結合している場合、ジョセフソン電流の向きは二重量子ドットのスピン状態に依存することになる。つまり、ジョセフソン電流という巨視的物理量が二重量子ドットのスピン状態によって制御されることになる。これは同時に、ジョセフソン電流という巨視的物理量を通じて微視的電子状態を観測する手段となりうる。電子スピンは量子力学的に揺らいでいるだけでなく、核スピンその他と相互作用し次第にコヒーレンスを失う。複数の量子ドットを介したジョセフソン電流から、量子スピンのコヒーレンス・デコヒーレンスの機構を解明する方法を探る。また、(2)複数の量子ドットと超伝導体の融合した量子系において実現可能な量子ビットの提案を行う。従来のジョセフソン接合に、多重量子ドットを介したジョセフソン接合を組み合わせることで量子ビットを構成することが可能であり、新しい量子ビットの提案を行いたい。

詳細は「論文/出版物」ページをご覧ください。