水とゲル

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長田 義仁
基幹研究所





生物軟組織における水の役割は?

我々生物の体を材料科学の視点で見た時、硬くて丈夫な骨に代表される骨格と、軟らかくてしなやかな筋肉や臓器などの軟組織で構成されています。含水量が10-30%の骨などのように弾性率が1010 [Pa]に達するような硬い材料のみならず、含水量が約80%の筋肉のような104 [Pa]程度という非常に幅広い機械強度を持つ材料で構成されています。これにより繊細な動き、しなやかで力強く、エネルギー効率に優れた運動の源となっています。この優れた運動性を実現しているのが、水の高度な利用であり、我々は、21世紀型の真の福祉社会を迎えるにあたり、含水材料を今こそ追求して行く必要があり、“エネルギー・資源・環境”を考える上でも、水の存在無くしては進めることは不可能だと考えています。

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従来から生体組織や、ハイドロゲル中の水として、「自由水、結合水、不凍水」などが定義され、それぞれの状態の水が、どのような水なのかについて多くの研究が行われております。しかし、これらの研究はいずれも静的な状態の水についてものであり、力学物性や機械強度に寄与する水としては着目されていません。そこで、我々は水の量を制御した様々の生体材料やハイドロゲルの機械物性を解明し、材料中に存在する水の構造、特性を様々な角度から評価することにより、全く新しい水の描像を書き記しています。これにより、低環境負荷の機能材料の創製という材料科学へのイノベーションを目指しています。