Home | 研究紹介

(4) 人工蛋白質のデザインと実験室進化(磯貝)

 

Protein design and laboratory evolution

 

酵素や転写因子などの天然タンパク質が示す洗練された機能は、天然タンパク質に特有な立体構造特性に依存している。とくに、分子量が大きく、多数の疎水性残基を含んでいるにもかかわらず、水溶液の中で高い溶解度を示し、単一な立体構造を形成することは、天然の球状タンパク質がもつ優れた分子物性の核心である。これらの性質のおかげで、NMRやX線結晶構造解析を使って、その詳細な立体構造を決定することも可能となる。タンパク質分子が、これらの特性を実現するためのアミノ酸配列を、天然のアミノ酸配列とは独立に決定することが、我々のデノボタンパク質設計(de novo protein design)の目標である

 

・人工ヘム蛋白質の設計と合成

Design and synthesis of heme-binding proteins

複雑な構造と機能をもつ生体内エネルギー変換系のモデル構築を目的として、天然蛋白質の基本的な構造モチーフである4本ヘリックスバンドルを骨組みとした一連の人工ヘム蛋白質の設計と合成を行った(図1)。これらの人工分子の構造トポロジーや熱力学的安定性、酸化還元電位を測定した結果、天然のシトクローム類が示す多様な酸化還元電位は、ヘムの種類や軸配位子などヘム周りの共有結合構造だけでなく、ポリペプチドが形成するヘムポケットの疎水環境や全体構造の安定性によってコントロールされていることが示された。

 

 

 

図1. 人工シトクロームのデザイン(模式図). ヘム鉄の軸配位子が二つともHisb型(b-type, bis-His)およびa型(a-type, bis-His)のシトクロームを最初に設計した。これをプロトタイプとして、第5配位子のHisを含むヘムc結合モチーフ(CXXCH)をアミノ酸配列に導入し、第6配位子がHisあるいはMetのシトクロームcc-type, bis-His/His-Met)を合成した。標準水素電極を基準とした酸化還元電位を下に示す。

 

・計算機を利用した分子設計

Computational protein design

計算科学的手法を用いて、λファージのDNA結合蛋白質(λCro)の立体構造を最適化するアミノ酸配列を設計した。λCroは、全長67残基のサブユニットからなるホモダイマーを形成し、二次構造としてαヘリックスとβシートをもつ古典的な転写因子の一つである。設計されたダイマー蛋白質のモノマー変異体を作製し、NMR解析により、その溶液構造を決定した(図2左)。得られた平均構造は、設計のターゲットとした天然λCroモノマー変異体のX線構造と比較して、主鎖のRMSD2.1Åの精度で一致した(図2右)。

 

 

 

2(左)人工Cro蛋白質のNMR解析から得られた10個の最低エネルギー構造。ポリペプチド主鎖を黒の実線、疎水性残基の側鎖をピンクの棒モデルで示した。(右)天然および人工Cro蛋白質の立体構造の比較。赤が人工蛋白質の平均溶液構造、白が天然λCroモノマー変異体のX線結晶構造を示す。

 

 

 

 

 

・人工蛋白質の実験室進化

Laboratory evolution of designed proteins

 

人工蛋白質遺伝子を親クローンとして、部位特異的にランダム変異を導入し、狙った機能を淘汰圧としたファージディスプレイ法等により実験室進化を試みる。人工ヘム蛋白質の機能プローブとして、ビオチン化ヘム(図3)の設計と合成を行った。また、レポーター遺伝子を用いたDNA結合蛋白質のin vivo選択系を作成した(図4)。

 

 

 

 

 

 

3. ビオチン化ヘム

 

4. 大腸菌を用いたDNA結合蛋白質のin vivo選択系