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2006年10月5日

物理に“ハマった”女性科学者

2006年7月13日、「第1回ロレアル・ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を理研の研修生が受賞した。中央研究所 山崎原子物理研究室の高峰愛子ジュニア・リサーチ・アソシエイト(JRA)だ。この賞は世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本法人、日本ロレアル(株)が日本ユネスコ国内委員会との共催のもと創設したもので、日本の若手女性科学者が国内の教育・研究機関で研究活動を継続できるよう奨励することを目的としている。高峰JRAらは、観察が難しかった不安定原子核を効率よく集める装置を開発。この成果は、今後、医療分野などへの応用が期待される。高校時代に物理に出会い、そして物理にハマった女性科学者、高峰JRAの素顔に迫る。

高峰愛子ジュニア・リサーチ・アソシエイト

高峰愛子 ジュニア・リサーチ・アソシエイト

中央研究所 山崎原子物理研究室

1978年10月27日、東京都生まれ。27歳。私立共立女子高校から1998年、東京大学教養学部理科一類へ入学し、2000年、教養学部基礎科学科へ進学。現在、同大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程3年、理研中央研究所 山崎原子物理研究室JRA。

不安定原子核を効率よく集める装置

図:不安定原子核を効率よく集める装置

リングサイクロトロンから出る重イオンビームを標的核に当て、不安定原子核を生成。その後、RIPSで目的の不安定原子核を選別し、減速板でエネルギーを減衰させる。高周波イオンガイドでさらに減衰・冷却して低エネルギービームに変換。六重極ビームガイドを通して、Qmassで不純物を取り除き、最終的にイオントラップで目的の不安定核を閉じ込める。その不安定核のレーザー冷却と精密分光にも成功した。

高峰JRAに受賞の感想をまず聞くと、「盆と正月が一緒にきた気分です!」と返ってきた。受賞者には賞状と奨学金として100万円が贈られた。その使い道は?「まだ決めていませんが、昨年亡くなった父のお墓を建てようかと」。高峰JRAらは、観察が難しかった不安定原子核を効率よく集める装置を開発(図)。その業績が認められたのだ。この装置をつくった目的は?「低エネルギーの不安定原子核ビームはいろいろな使い道があるんです。まず、今、実験を進めているベリリウム(Be)不安定核の中性子と陽子の分布を調べたいですね。これは今まで誰もできなかったことなので、原子核物理の新しい知見が見つかるはずです。今後は、がん治療など医療分野への応用も考えています」。さらに「今、理研がつくっているRIビームファクトリーを使えば、Beだけでなくすべての元素の不安定核がつくれるので、もっといろいろなことができるようになります」

幼いころの夢は?「小学生のときは理科が嫌いでしたが、親に言われるがままに“医者”と言っていました。私の親は貧乏育ちで苦労したので、“医者になってもうけてくれ”と言っていました(笑)」。中学生でミュージシャン、高校1年で絵描きになりたかったという高峰JRAが物理に出会ったのは高校2年。「暗記するのが苦手で……、物理は基本法則を使って自分で一から考えて問題を解けるから楽しいんですよ。解くたびに面白い。物理にハマったんです!」。卒業後、東京大学へ入学。2年のときに山崎泰規主任研究員(理研・東大兼務)と出会った。「先生の物理の講義を受け、なかなか難しい授業だったのですが、なぜか惹(ひ)きつけられ、毎週楽しみでしたね。その後、東大の山崎研究室に入り、2002年から理研でも研究するようになりました」。現在、不安定原子核を研究対象としている理由は?「原子核物理は1970年代に(安定な原子核については)ほとんど分かったと思われていました。しかし、加速器が発達してリングサイクロトロンなどで得られる高エネルギービームを使って不安定核がつくれるようになったら、今までの理論が通用しない現象が見えてきたんです。そこで、原子核物理を立て直さなければいけなくなりました。それをやりたいんです!」

尊敬する研究者は?「同じ研究室の和田道治さん(先任研究員)。研究だけでなく、人としての在り方も指導してくださる方で、ああなれたらなぁと思います」。今後は?「研究を続けたいですね。土日も研究したいくらいです。勉強もしたいし、装置の改良もしたい、とにかく時間が足りない!」。最後に「結婚もしたいですね(笑)」と本音も聞かせてくれた。物理の分野で活躍する数少ない女性科学者の一人、高峰JRAのこれからに期待したい。

『理研ニュース』2006年10月号より転載