採用情報

Print

2009年5月7日

ゴルジ体に魅せられたテクニカルスタッフ

理研基幹研究所 中野生体膜研究室(中野明彦主任研究員)に、ゴルジ体に魅せられ、その謎に挑むテクニカルスタッフがいる。庄田恵子 協力技術員だ。庄田技術員はゴルジ体の魅力を、「蛍光タンパク質を付けたゴルジ体が、細胞の中で光って動き回る様子はとてもキレイ。まるでプラネタリウムのようです」と表現する(図1、2)。ゴルジ体は核、小胞体などの細胞小器官の一つで、細胞の中で新しくできたタンパク質を酵素で修飾し、液胞膜や細胞膜など目的地ごとに仕分けして送り出す、いわば“配送センター”の役割をしている。「ゴルジ体は発見されてから100年以上もたった今でも、まだ謎ばかり。その謎を一つ一つひもといて、全体像の解明に貢献したいと思っています」。子どものころから植物が育つ姿を観察するのが好きだったという庄田技術員の素顔に迫る。

庄田恵子協力技術員

庄田恵子 協力技術員

基幹研究所 中野生体膜研究室

1972年6月、東京都生まれ。東京都立戸山高校から1991年、東邦大学生物分子科学科へ進学。1998年、東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻修士課程修了。東京大学分子細胞生物学研究所 技術補佐員を経て、1999年理化学研究所入所。

シロイヌナズナのゴルジ体

図:シロイヌナズナのゴルジ体

高感度高速共焦点レーザー顕微鏡で観察。緑色がシス側、赤色がトランス側。層板構造を保ちながら活発に細胞内を動き回っている様子をとらえることに成功した。

「将来の夢はお花屋さんでした」と庄田技術員。「種をまいた植木鉢をジーッと一日中見ているような子どもでした」。好きだった科目は理科と美術。「中学生のとき、新宿区主催の実験教室に通っていました。顕微鏡で岩石の結晶などを観察し、キレイだなぁと思ったのがすごく印象に残っていますね。顕微鏡を使うといつもの世界が違って見えるんです」。クラブ活動では絵本を制作していた。「1年に1冊、絵本をつくって保育園で発表していました。絵を描くのも好きだし、見るのも好き。友達と美術館に行って何時間も見ていました」。そして高校へ進学。「小学校~高校と理科の先生に恵まれていたので、その仕事にあこがれていましたね。どんな仕事に就くか分からないけれど、大学に行って自分の好きなことを見つけたいと考えていました。美術系の大学に進学することも考えましたが、最終的に分子生物学を目指すことにしました」。1991年、東邦大学生物分子科学科へ進学し、教員免許を取得。「実習で子どもたちに教える中で、まず教えるには自分がもっと勉強しなければいけないと思い、東京大学の修士課程に進みました」

1999年、理研脳科学総合研究センターへ。翌年8月に理研基幹研究所 中野生体膜研究室に移った。「テクニカルスタッフなので研究室の共通の仕事を主に担当していました。2003年に中野明彦主任研究員から“自分のテーマを持ってやってみないか”と勧められたんです。とてもうれしかったですね。今は、(1)ゴルジ体はなぜこのような形をしているのか、(2)ゴルジ体はどのようにして生まれてくるのか、(3)ゴルジ体の機能は多細胞生物にどのように貢献しているのか、この三つの謎について調べています」。どんな実験をしているのか。「実験にはシロイヌナズナを使っています。植物ゴルジ体の大きさは約0.5μmで、袋状の構造(槽)が数枚重なった層板構造をしていて、大きく三つの部分(シス、メディアル、トランス)に分けられます。(2)について調べるために、シスとトランス、それぞれに局在するタンパク質を光らせた様子が図3です。層板構造を維持しながら、非常に活発に動き回っている様子を動画でとらえることができました。ゴルジ体のもとと思われるものも見つかっています。これから長時間の動画撮影にも挑戦して、最終的にはゴルジ体の一生を観てみたいですね」

尊敬する人は?「母親です。すごく好奇心が強い人なので、私の観察好きは母親の影響を受けています。もう一人は中野主任研究員。温かく、そして優しく見守ってくださるし、研究に関して強い情熱をお持ちです。中野主任研究員との出会いは、私の人生の中で大きいですね」。最後に「私の研究室には尊敬できる人たちが集まっています」と語った庄田技術員。庄田技術員をはじめ中野生体膜研究室のメンバーがゴルジ体の謎を次々と解明していくだろう。

※この研究成果は平成19年度研究奨励ファンドに採択された課題によるものです。このファンドは、若手の意欲的な研究を奨励することを目的とし、理研基幹研究所・理研仁科加速器研究センター・理研放射光科学総合研究センターで横断的に実施しているものです。

『理研ニュース』2009年5月号より転載