多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御

組織・研究内容

研究課題名
赤芽球におけるLMO2を介した転写制御機構の解明

藤原 亨
研究代表者
藤原 亨
東北大学・血液分子治療学寄附講座 助教
研究室HPE-mail

研究内容

 細胞分化における遺伝子発現の調節には細胞系列特異的な転写因子が関与していると考えられており、このうち赤血球の分化においては、GATA-1転写因子が重要な役割を果たしている。GATA-1は、Scl/TAL1、LMO2、LDB1、ETO2などの転写因子もしくは共役因子と複合体を形成していることが明らかとなっており、これらの因子がGATA-1による遺伝子発現制御に影響を及ぼしていることが予想される。このうち非DNA結合蛋白質であるLMO2は、赤芽球分化におけるその重要性は報告されているものの、赤芽球系遺伝子発現への影響およびエピゲノム形成への寄与など、その分子学的メカニズムは明らかとなっていない。

 藤原らは、マウス赤芽球系細胞株(G1E-ER-GATA-1細胞)においてLMO2のノックダウンを行い、マイクロアレイ解析を行った。その結果、LMO2のノックダウンにより2.2倍以上の変動を認めた遺伝子群のうちの大多数 (96.1%)は発現上昇を呈した(PNAS. 2010)。したがって、LMO2はその下流の遺伝子群の発現抑制を介して赤芽球分化に関与していると予想された。さらに、多くのGATA-1標的遺伝子の発現制御においてFOG-1(Friend of GATA-1)が重要な役割を果たしていることが知られているが、LMO2はFOG1非依存性GATA-1標的遺伝子群の発現抑制に何らかの関わりがある可能性が示唆された(PNAS. 2010)。

 本研究においては、赤芽球分化に関わる遺伝子群の制御において、LMO2がいかに関与するかを明らかにすることを目的とする。これまでの解析においては赤芽球系細胞株(G1E-ER-GATA-1)を用いた解析を行ってきたが、本研究においては主に臍帯血由来ヒトCD34陽性細胞からの赤芽球分化系を用いる。 LMO2は白血病発症との関連を示唆する報告が多数あることから、赤芽球系以外の細胞系列の正常な分化においても重要な役割を果たしていると考えられる。本研究を通じ、LMO2を介した転写抑制メカニズムを明らかにすることにより、赤芽球のみならず造血細胞分化の分子機構の一端が明らかとなることが期待される。

主な論文

* correspondence
研究代表者
藤原 亨

Fujiwara T, Lee HY, Sanalkumar R, *Bresnick EH. Building multifunctionality into a complex containing master regulators of hematopoiesis.
Proc Natl Acad Sci U.S.A. 107:20429-20434, 2010.

Fujiwara T, O'Geen H, Keles S, Blahnik K, Linnemann AK, Kang YA, Choi K, Farnham PJ, *Bresnick EH. Discovering hematopoietic mechanisms through genome-wide analysis of GATA factor chromatin occupancy.
Mol Cell. 36:667-681, 2009.

Fujiwara T, *Harigae H, Takahashi S , Furuyama K, Nakajima O, Sun J, Igarashi K, Yamamoto M, Kaku M, Sassa S, Sasaki T. Differential gene expression
profiling between wild-type and ALAS2-null erythroblasts: identification of novel heme-regulated genes.
Biochem Biophys Res Commun. 340:105-110, 2006.

 
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