多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明究領域略称:細胞運命制御

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組織・研究内容

研究課題名
哺乳動物網膜をモデル系としたエピジェネティックな制御による細胞運命決定機構の研究

渡辺 すみ子
研究代表者
渡辺 すみ子
東京大学医科学研究所・特任教授
研究室HPE-mail

研究内容

 網膜は中枢神経の一部であるが、小さく比較的単純な全体構造を持ち、神経研究のモデル系として好適の器官である。眼の発生過程の分子基盤は、高齢化社会を迎え、再生、アンチエイジングという観点からも注目されている。我々は、網膜プロジェニター、網膜神経・グリア細胞やその前駆細胞に特異的に発現する表面抗原を決定し、セルソーターで精製した特定の網膜細胞系譜の細胞集団を用いて細胞の分化制御の研究を開始した。網膜は6種類に大別される神経細胞と2種類のグリア細胞で構成され、共通の網膜プロジェニター細胞から、発生の時間軸にそって逐次的に分化する。この過程で網膜プロジェニターに発現する遺伝子のクロマチン構造にエピジェネティックな変化が起こっていくことを仮定して、「細胞運命制御」の平成23,24年度公募研究にて網膜発生に伴うヒストンメチル化について検討を加えた。その結果、ヒストンH3K27のトリメチル(me3)のJmjd3による脱メチル化が網膜の介在神経の一つである双極細胞の分化制御に必須であるという結果を得た。また、H3K4me3について検討したところ、複数の遺伝子座で双極細胞での特異的修飾が観察された。双極細胞は視細胞のシグナルを伝える介在神経の一つとして網膜の重要な機能を担っている。また比較的後期に分化するため、分化制御を検討するモデル系として好適である。本提案では、Jmjd3による制御を中心にしたヒストンH3K27me3の脱メチル化制御に着目し、その双極細胞を中心とした網膜分化での役割を明らかにすることを課題とする。さらに、ヒストンH3K4me3の双極細胞分化での役割を明らかにする。このため、双極細胞を単離する系をたちあげ、その分化にかかわる遺伝子発現パターンを、各発生ステージで把握し、これらの遺伝子座のヒストンK4,K27メチル化修飾の網膜分化過程での役割を明らかにする。

主な論文

* correspondence
研究代表者
渡辺 すみ子

Usui, A, Mochizuki, Y, Iida, A, Miyauchi, E, Satoh, S, Sock, E, Nakauchi, H, Aburatani, H, Murakami, A, Wegner, M, and *Watanabe, S.
The early retinal progenitor-expressed gene Sox11 regulates the timing of the differentiation of retinal cells.
Development, 140, 740-750, 2013

Satoh S, Tang K, Iida, A, Inoue M, Kodama T, Tsai S-Y, Tsai M-J, Furuta Y, and *Watanabe S.
The spatial patterning of mouse cone opsin expression is regulated by BMP signaling through downstream effector COUP-TF nuclear receptors.
J. Neurosci., 29: 12401-12411, 2009

Koso H, Iida, A, Tabata Y, Baba Y, Satoh S, Taketo MM, *Watanabe S.
CD138/syndecan-1 and SSEA-1 mark distinct populations of developing ciliary epithelium that are regulated differentially by Wnt signal.
Stem Cells, 26: 3162-3171, 2008

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