トップコミットメント

理化学研究所の研究成果は、我が国の震災からの復興と成長、
さらに人類社会の存続に貢献します。

 人類が歩んできた道のりは、厳しい自然との対峙と適応の歴史でした。豊かな恵みを与える自然ですが、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震と津波は、あらためてその厳しさ、恐ろしさを教えるものでした。

 私たちはこの大震災を契機として、自然への畏怖の念を新たにするだけでなく、地球という有限の枠組みの中で、人類がいかに存続していくかについてこれまで以上に真剣に考え、そのための具体的な課題解決に取り組まなくてはなりません。我が国は震災からの復興を進めるとともに、人類共通の環境問題に世界の先頭に立って挑む姿勢を明確に打ち出し、取り組むことができれば、世界から共感をもって迎えられることと思います。
 このたびの震災は環境をめぐる私たちの価値観に大きな一石を投じました。太陽光をはじめバイオマスなど再生可能エネルギーへの期待は高まり、その利活用は右肩上がりに加速していきます。そして、それだけでなく、水や食料の安定供給が全国民的な関心事項となり、議論が重ねられています。これまで地球規模問題として人びとが日常の認識から遠ざけていた事柄が、ごく身近な課題として語られているのです。

 この未曽有の災害に際し、当研究所が被災地に直ちにお返しできることは決して多くありません。しかし、日本が直面している課題の中長期的な解決には、当研究所が長年培ってきた物理学、化学、生物学、医科学から工学に及ぶ幅広い分野にわたる最先端研究が、そして他機関との相補的連携研究が必ず寄与するものと確信しています。当研究所では、個人知を理研知へ統合し、さらに社会知へと展開して社会の要請に応えるために、個人や分野ごとの研究を超え、より組織的かつ戦略的な研究活動を推進しています。是が非でも日本の復興と成長の原動力となり、延いては人類の抱える大きな問題の解決に貢献したいと考えています。

 本環境報告書では、当研究所の環境負荷低減対策の報告をするとともに、国や人類の存続の鍵となる科学技術の研究活動の一端を感じていただければ幸いです。

理事長 野依 良治
理事長 野依 良治