本所、和光研究所及び社会知創成事業

小川智也

和光研究所
所長 小川智也

和光事業所の環境方針

 和光事業所は、90年余りに渡る理研の歴史を支えてきた、幅広い自然科学分野の基礎研究活動を行う基幹研究所、加速器物理を中心とした研究を行う仁科加速器研究センター、脳の高次機能解明にかかわる研究を行う脳科学総合研究センター、2010年に発足した社会知創成事業が中心となり、さまざまな世界最先端の研究を推進しています。また、理化学研究所の本所として、経営方針の決定や情報発信の拠点機能も有しています。
 環境問題への取り組みとしては、1963年に駒込から和光へ移転して以来、一貫して事業所構内の緑化に努めており、半世紀近くを経たこの緑は、職員や近隣の方々の目を楽しませています。そして、建物屋上の緑化もいち早く取り組むなど、環境活動の側面でも理研内の他の事業所のモデルとなっています。また、和光事業所は地域でも有数の桜の名所であり、毎年桜が一番きれいに咲く時期の土曜日にキャンパスを開放し、地域の皆様にお花見を楽しんでいただいています。さらに、太陽光発電設備の導入、LED照明や高効率型照明への更新など設備面の更新によるCO2排出量削減、エネルギー使用状況をリアルタイムで表示するとともにクールビズ・ウォームビズの励行などによる職員の意識の向上にも努めています。
 環境問題への対応は、職員一人ひとりの心がけはもちろんですが、事業所として、自治体や関連する組織との連携が不可欠です。和光事業所では、「埼玉県地球温暖化対策計画」に基づき、事業所の温室効果ガスの排出量実績の公表及び削減計画を実行し、埼玉県と連携した地球温暖化対策を展開しています。さらに「和光市環境基本条例」の理念に則り、「環境審議会」「市民策定委員会」「環境づくり市民会議」に参加し、和光市の一員として地域の環境政策に積極的に取り組むとともに、地元の皆様のご意見を受け止める場として活用させていただいています。また、年に3回、職員による事業所近辺のゴミ拾い活動を実施し、周辺環境の美化に努めています。今後も自治体と、環境に対する姿勢を共有しつつ、地域社会への貢献という視点から、環境を意識した提案や施策を実施し、事業所の環境配慮活動に反映すべく鋭意努力をしていきます。

研究と環境貢献

和光キャンパスでは四季折々の自然が楽しめます。
和光キャンパスでは四季折々の自然が楽しめます。

 理研の他の事業所と異なり和光事業所では、物理や化学、工学、生物学、医科学、脳科学といった様々な分野の研究室が活動しているのが特徴です。これらの研究室は、伝統的に研究室間の壁が低く、分野の異なる研究者同士の連携が活発に繰り広げられています。その結果、既存の考え方にとらわれない、研究者の自由な発想や好奇心に基づく基礎研究から新たな研究の芽が生まれます。それを広がりのある研究領域として戦略的に育て、さらに、中核的な研究拠点として発展させる仕組みもあります。
 21世紀の環境問題に代表される地球規模の複雑系課題の解決に関しては、個々の研究者の自由な研究とともに、そこから生まれる多様な知見を戦略的・相乗的に生かすイノベーション研究が不可欠だと考えています。このような仕組みのなかで成長し続けている研究として、基幹研究所の「グリーン未来物質創成研究領域」や「ケミカルバイオロジー研究領域」があります。さらに世界に冠絶する性能の重粒子加速器を有する仁科加速器研究センターでは、「重イオンビームを用いた環境耐性植物の開発研究」なども実施しており、目覚しい研究成果を発表しています。また、社会知創成事業のバイオマス工学研究プログラムも地球環境保全への貢献を展開しています。
 地球環境に関する課題は、さまざまな視点から総合的に取り組むべきであり、これに関する科学技術とイノベーションの重要性は国際的にも高くなっています。私たちはこれらの使命に応えるべく努力していきます。