トップコミットメント

グリーンイノベーションを推進し、日本の成長や発展に貢献します。

「自然を理解し、自然を尊ぶ」

これは理化学研究所の環境理念です。我が国唯一の自然科学の総合研究機関として、理研の職員一人ひとりは、自然を理解するという研究活動を通じて持続可能な文明社会の構築を目指すとともに、常に自然を尊ぶ精神を心に留めなくはならない、と考えています。

現代の文明社会の礎を築いてきた科学技術ですが、今後は、化石燃料に代わるエネルギーの確保や温暖化による気候変動への対策など、地球規模で引き起こされているさまざまな環境問題の解決が期待されています。日本国内に目を向けてみても、近隣国の急速な経済発展による大気汚染の越境拡大や、東日本大震災で顕在化した原子力発電に代わる新エネルギーの必要性、メタンハイドレートといった海底資源の発掘などに注目が集まっています。

これら課題に対応すべく、2011年8月、内閣府は「第4次科学技術基本計画」を定めました。ここでは、「震災からの復興、再生の実現」や「ライフイノベーションの推進」、「グリーンイノベーションの推進」が、我が国の将来にわたる成長と社会の発展を実現させるための主要な柱と位置付けられています。

中でも「グリーンイノベーションの推進」には、環境やエネルギーに関する課題を解決し、新たな価値観やライフスタイルを確立するための技術革新となることが期待されています。

理研は、我が国の科学技術政策に積極的、主体的に貢献するため、2013年4月に第3期中期計画を策定し、今後5年間の重要な研究分野の1つに「グリーンイノベーション分野」を取り上げました。具体的には、既存の「バイオマス工学研究プログラム」に加えて「創発物性科学研究センター」「環境資源科学研究センター」の2つのプロジェクトを創設し、地球規模の課題解決型研究を進めています。これらのプロジェクトでは、自らの研究の枠に捉われず、分野を越えた研究者同士や産業界との連携を積極的に推し進めています。

総合安全環境会議 委員長 理事 米倉 実

野依良治理事長は、科学技術(Science&Technology)の「ST」、イノベーション(Innovation)の「I」に、再建(Reconstruction)、改革(Reform)の「R」を加えた「STIR(かきまぜる、奮起させる)」を旗印として掲げ、社会に貢献する知の創造を目指すと表明しています。理研が取組む分野や文化を越えた研究活動は、課題解決型研究の重要な原動力となることでしょう。

さて、本環境報告書では、最先端の環境研究のいくつかを紹介するとともに、さまざまな環境負荷に関するデータも紹介しています。研究活動は大きな環境負荷の上に成り立つものである、という認識のもと、冒頭に述べた環境理念に沿った研究活動が実践されているのか、そして「STIR」を体現する研究活動が行われているのか、厳しい目でご覧いただけますと幸いです。

2013年9月
総合安全環境会議委員長
理事 米倉 実