監事意見書

環境報告書監事意見書

理化学研究所は日本で唯一の自然科学の総合研究機関です。対象とする研究領域は広く多岐に亘っており、その多くが環境と深い関連を持つものです。これまで数多くの研究成果を創出してきた一方で、その活動は環境に負の影響を与えるものでもあります。従って、理研は社会に対しては研究の目指す方向を、環境に対しては十分な配慮を行っていることを説明する必要があり、環境報告書の作成と公表は非常に重要です。

環境報告書2013の「特集」の項を見ると、2013年4月から始まった第三期中期計画のもと、理研が取り組む研究領域の中から環境と関連の深い分野が四つ紹介されています。まず、資源・エネルギー循環型社会の実現を目指す「環境資源科学センター」、バイオエネルギーの未来を大きく変える可能性を秘めた「ミナトカモジグサ」、再生可能エネルギーのニューフェイス「フレネル・サン・ハウス」、そしてエネルギー問題の解決に貢献する「強相関電子系を活用した熱電変換」です。専門分野を簡潔で分かりやすく説明しており、理研の目指す研究活動を知ってもらうために有効な内容となっています。

「環境報告」の項では、「環境理念」「環境マネジメント体制」は簡潔な記載となっています。「アクションプラン」では、全事業所および八つの事業所それぞれが2012年度に取り組んだ具体的なアクションプラン、自己評価そして総括が記載されています。表形式で分かりやすく記載されており、理研の取り組みを知ってもらうのに有効です。しかし、未達成のアクションプランについては、今後の取り組みを総括で説明しておくことが望まれます。「環境データ」は環境負荷の全体像が数値で示されており、理解しやすい内容となっています。「大気汚染防止」については規制値と測定値が示されており明瞭です。「排水管理」の記載は簡潔ですが、有害物質や汚濁物質にどのようなものがあり、どんな管理をしているかが数値で示されると安心感がさらに高まります。特に、和光事業所が取り組む実験排水の再利用については、処理過程や処理量が示されていて分かりやすいものの、再処理量の減少傾向について説明があるとさらによかったと思います。社会的な関心が高い「放射線管理」については、排気や排水の規制値と測定値が示されると説得力が増すでしょう。「温暖化防止」「廃棄物削減」「化学物質管理」では具体的な数値とともに説明されており、分かりやすい内容となっています。

独立行政法人理化学研究所 監事 清水 至

「各事業所の環境トピックス」「社会・地域との環境コミュニケーション」「働きやすい職場作り」は適切な説明と思います。

この報告書は、理研の果たすべき役割と責任を説明できていると考えます。

独立行政法人理化学研究所
監事 清水 至