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フェムト秒光パルスの連続励起によるテラヘルツ波の発生と周波数同調
テラヘルツ波の発生技術に関する分類の一つとして、光波からの周波数変換があります。これは、波長が異なる2つのレーザー光を差周波混合させることで、テラヘルツ波を発生させる手法です。このとき、分光の周波数分解能を高めるためには、線幅が狭く、言い換えればパルス幅が広いレーザー光を用いる必要があり、このような光では、パルスの尖頭値が低下する結果、テラヘルツ波の発生強度が大きく低下するという問題が挙げられます。
そこで本研究では、フェムト秒光パルスを利用した周波数可変のテラヘルツ波発生技術の確立を目的としています。ここでは、その光パルス
を時間的に整形することで“光パルス列”を生成して、光伝導素子へ連続励起するユニークな手法を採用しています。この際、光パルス列の生成に、段差反射鏡による往復反射を利用する方法を独自に考案しました。
図1.考案したフェムト秒光パルス列の生成原理。
(a) 半円形の反射鏡2枚を、円を形成するように密着させる。その際、テラヘルツ波の半波長分だけ段差を付ける。そして、単一のフェムト秒光パルスを持つビームを、段差を跨ぐ鏡面で反射させる。すると、同一ビーム内でパルス面が2つに分離され、両者に時間差が生じる。
(b) この反射ビームを平面鏡で反射して折り返し、再び段差反射鏡で反射させ、これを複数回往復させる。このとき、段差反射鏡面での反射領域を(図1(a)の)縦方向にずらしながら往復反射させる。
(c) すると、同一ビーム内で、パルス面が階段のように等間隔な時間差を持つ波形に変換される。
(d) このビームをレンズで集光すると、焦点においてフェムト秒光パルス列が形成される。さらに、焦点に光伝導素子を設置することで、パルスと同数のサイクルを持つテラヘルツ波が発生する。
図2.テラヘルツ波発生の原理実証実験光学系。チタン・サファイアレーザーでパルス幅200fsの光パルスを生成。段差反射機構でパルス列を整形し、テラヘルツ波を発生させる。電気光学サンプリング法でテラヘルツ波の波形を計測する。
図3.(左)整形されたフェムト秒光パルス列の自己相関波形、及び(右)対応するテラヘルツ波波形。各図中の数値は段差の幅を表す。段差反射鏡の段差を機械的に調整することで、光パルスの時間間隔が変調されると同時に、テラヘルツ波の周期も同調される。
図4.段差を調整した際のテラヘルツ波のスペクトルの変化。段差を狭めるに従って、ピーク周波数が高周波側にシフトしている。
図5.段差に対するテラヘルツ波のピーク周波数の関係。実線は計算値。
参考文献
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K. Uematsu, K. Maki, and C. Otani,
"Terahertz-wave generation via the femtosecond pulse train produced by a step mirror and a corner cube array,"
International workshop on terahertz technology (TeraTech'09), Osaka, 1P-20 (2009)
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K. Uematsu, K. Maki, and C. Otani,
"Terahertz-wave generation and frequency tuning via the femtosecond pulse train produced by a step mirror,"
The 34rd International Conference on Infrared, Millimeter, and Terahertz Waves (IRMMW-THz 2009), Busan, W5E09.0366 (2009)
特許出願
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牧 謙一郎、植松 浩司、大谷 知行、"電磁波パルス列生成装置、" 特願2009-267643
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牧 謙一郎、植松 浩司、大谷 知行、"電磁波発生装置および電磁波発生方法、" 特願2009-119617