外部連携

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産業連携の挑戦者たち

第1回 複合機能発現材料研究チーム

複合機能発現材料研究チームでは、フラーレンを活用し、酸化チタン等の光触媒材料を用いた光触媒コート剤の性能・耐久性を2倍以上に向上させる技術に成功しました。 産学連携の挑戦者たち第1回目は、理研初ユニークな共同研究スタイルの「産業界との融合的連携研究プログラム」に参加してくださった研究者の方々へスポットをあてました。

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複合機能発現材料研究チーム

チームリーダー

山舗 哲也 さん(東レ株式会社)[写真左]

副チームリーダー

田島 右副 さん(理研)[写真右]

産業界との融合的連携研究プログラムに参加して…

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山舗 哲也 さん

山舗:この「産業界との融合的連携プログラム」のメリットは、普通の共同研究とは異なって、理研側の研究者と同じ研究環境で一緒になって研究を推進することができるということです。研究現場を一つにすることによって目標を効率的に共有化でき、チームのなかで日常の研究進捗と合わせて目標をよりクリアにすることができます。一般的な共同研究の場合、人と人が頻繁に会っていたとしても研究場所が離れたところにあるだけで、それぞれの思いや情報というのが完全に伝わりにくいものです。場所を一緒にして、一緒に研究活動するというのは非常に効率的です。また、パートナーの田島さんが同い年で同郷であり、すぐに意気投合できたということも上手く行った理由の一つです。

企業と研究所の研究スタイルの違い

山舗:通常、企業での研究推進は、明確な応用・目的に向かって進められます。一方、研究を進めるに従って、新たな発見や課題など、様々な「分かれ道」が出てきます。「研究開発の効率」と「広がる興味」、このふたつは企業で研究するものにとって、いつも意識しているものです。特定の目標だけを追うと視点が固定化されて、アクテビティが落ちてしまい、その反面、寄り道をすると本命のミッションに不利益になる可能性があります。

東レには「アングラ研究」という制度があり、研究者に研究時間の20%以内で探索研究を認めています。常に先端材料を創出するためには、非常に大切なことです。今回は、基礎研究分野で活躍してきた田島さんたちと協力する中で、この探索研究の幅をより厚くし、いくつかの重要なカードを見つけることができました。理研のなかで築き上げられてきた基礎研究分野の文化から大きなヒントを得られたのだと思います。

理研が持つインフラとポテンシャル

山舗:また、ひとつの研究室を立ち上げるのは様々な困難があるものです。もし別の組織で同様な規模の研究室を立ち上げるのだったら、今回以上に労力と時間がかかったことでしょう。立ち上げの当初から理研の事務部門の柔軟なサポート体制に驚きました。これも理研という組織だからこそ実現可能なのだと思います。

理研は、日本を代表する「総合研究所」です。企業側の研究者にとって、その最先端の豊かなインフラとポテンシャルを活用できることは大いに有益ですし、自分たちとはまったく異なる研究分野で活躍している様々な研究者たちとコミュニケートできる研究環境に身を置くことにより、新しい視点を身につけることができると思います。

素晴らしいパートナーに出会えたこと

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田島 右副 さん

田島:この「産業界との融合連携的プログラム」は、研究の進捗を統括するチームリーダーをパートナーの企業側の研究者から選んで就任してもらい、そして、企業側の研究ニーズに近い基礎研究を行っている理研側の研究者が副チームリーダーとして就任して、理研の中に産学連携の共同研究チームを作ってしまうという画期的なプログラムになっています。理研の研究現場で生み出された基礎研究の成果を上手に企業の製品開発まで運んでもらうには、基礎研究の立場を理解することができて、かつ企業内で機動力と責任性を兼ね備えた人物に来て頂くことが不可欠でした。チームリーダーの東レ株式会社の山舗さんは、その条件を十分に満たし、更にミッションで求められる以上の積極的な提案もしてくれる素晴しいパートナーです。私自身も基礎研究を行ってきましたが、それだけではなく、自分の研究が応用されるまで見届けて、産業界に広げていきたいという思いがありましたから、お互いスタンスが合ったのでしょう。

基礎研究から応用研究へのバトンゾーン

田島:チームを立ち上げるときに、製品化つまり開発の最終場面を自分の目で把握しておく必要があると思ったので、一度、東レ(株)の工場を見学させ頂きました。そして、実際の製造作業に携わっている方々からも意見を聞くことができました。我々が研究活動している研究室とは全く異なる現場の事情をリアルに実感できました。我々の基礎研究から出てくる成果が企業内で応用化され、具体的な製品として出来上がってくるまではやりとても長い距離があることを理解しました。こうした製品化の現場を自分の目で見るということは、自分たちが生み出した技術や成果について、企業側が活用しやすいようにどうしたらスムーズにバトンを渡せるかを根本的に見直す良い機会となりました。

産学連携は、基礎研究にやりがいと面白みを与えてくれる

田島:研究を進めていくなかで最も重要なのはチームを構成する人材です。研究自体は理研の中で行われますが、研究から出てくる成果は企業から世の中に出て行くことを目標としているわけです。従って、今回は理研側でも人材募集又は育成などについては、企業マインドを意識せざるを得ませんでした。限定された基礎研究テーマに没頭するだけではなく、企業内での応用研究にも取り組める柔軟な人材を育成していくことがこのプログラムのもう一つの目的でもあると思います。基礎研究に携わっている研究者でも自ら社会や産業に貢献しようという意識を持つだけで研究にやりがいと面白味が増してくるものです。幸運にも素晴しいスタッフに恵まれて早くも目覚しい成果を得ることができました。

こういったプログラムを通して企業の方々と一緒に研究することは大変有意義です。研究も含めて様々な点において勉強させて頂きました。

(2006年7月掲載)

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