外部連携

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産業連携の挑戦者たち

第6回 連携促進研究員 猪爪 優子 さん

基幹研究所ケミカルバイオロジー研究基盤施設バイオ解析チーム(堂前 直チームヘッド)の連携促進研究員である猪爪 優子さん(日華化学株式会社)にスポットをあてました。

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バイオ解析チーム

チームヘッド

堂前 直さん[写真右]

連携促進研究員

猪爪 優子さん(日華化学株式会社)[写真左]

産業利用を目指したクラゲの研究

――理研に来られる前はどういった仕事をしておりましたか。

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猪爪 優子 さん

猪爪:日華化学株式会社は界面化学・高分子化学を中心とする界面科学の作用を中心に繊維加工をはじめ、金属加工、紙・パルプ、クリーニング業界へ、技術・製品の提供しており、またライフサイエンスを基盤とする毛髪用化粧品、医薬品など事業展開を行なっています。私はその中で、繊維や樹脂分野への技術・製品を提供する化学品の研究を行なっていました。

当時は入社して5年目。学生だった頃に生物を専攻していたこともあり、有効成分を抽出するような基礎研究を行なっていた背景があったこと、若手で柔軟に動くことのできそうな人材であったことなどから、会社から命じられ連携促進研究員として理研に出向することになりました 。

――連携促進研究員制度へ応募する前から理研のことはご存知でしたか。

猪爪:「理研」という名前は知っていましたが、実際に内部がどういった組織になっているかは分からず、漠然と「すごい研究所だ」という印象を持っていました。理研に出向してからは思ったほど権威ぶっている雰囲気もなく、大学のような雰囲気に近いなと感じるようになりました。

――連携促進研究員として理研ではどのような研究をしていたのでしょうか。

猪爪:クラゲから抽出したコラーゲンを対象とした解析をしておりました。当初はエチゼンクラゲを対象としていたのですが、エチゼンクラゲがあまり捕れなくなってしまったので、その代わりとして材料にはミズクラゲを使用していました。ミズクラゲは発電所の近辺で取水口に詰まるなど害を及ぼす一方で、大量に産廃として処分されており、材料としては適切であったと思います。

――どのような成果が見えてきたのでしょうか。

猪爪:ミズクラゲのコラーゲン分解物の指標を決めることができ、コラーゲンのおおよそのかたちが判明しました。また、効果のありそうな候補物質をいくつか発見することができました。この候補物質の中から実際に商品につなげられるものが出てくると嬉しいなと思います。

堂前:応用できそうな「何か」が見つかれば、日華化学さんにとって、製品化への具体的な道筋が見えてくると思います。クラゲのコラーゲン分解物から猪爪さんが「何か」を探すという明確な研究計画だったからこそ、限られた期間ではあっても着実にステップを踏むことができたと思います。

連携促進研究員を通じた産業連携のかたち

――振り返ってみて、印象に残っていることは何でしょうか。

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堂前 直 さん

猪爪:材料のミズクラゲをお台場に獲りに行ったことでしょうか。網ですくって捕まえ、氷の詰まった発泡スチロールに入れて、運搬するという原始的な方法でした(笑)あの時に捕まえたクラゲが今の研究成果の元となっていると思うと、感慨深いです。

また、理研の一般公開のときに日華化学のブース展示をさせていただいたことも良かったです。界面活性剤の研究者だったので「割れないシャボン玉」を作り、とても好評でした。連携促進研究員という立場を通じて自社のPRをすることが出来て良かったです。

――今回の連携促進研究員制度によって、日華化学と理研の今後の関係はどうなっていくでしょうか。

猪爪:今回の研究成果を踏まえて、10月に会社に戻ってからは、応用化の検討をする予定です。堂前ラボは基本的には構造の決定やものの抽出といった仕事がメインになるので、連携促進研究員の期間中にできなかった分析は会社に戻ってから続けることになると思います。

堂前:これからは、より商品化が近い開発となるため、今回の研究成果が商品に繋がることを期待しております。

猪爪:私の連携促進研究員としての任期は終わった後も、共同研究を続けていければ良いなと思います。研究が進むにつれて、また他の候補物質が見つかるようなことがあれば、また測定の依頼など、何度かお願いすることになると思います。

――我々としても日華化学と理研が共同研究する中で、商品に結びつくものが出てくると嬉しいです。

猪爪:今回はたまたまクラゲをテーマに理研に来ましたが、会社としては連携促進研究員に限らず、今後も様々なかたちで理研と繋がりをもちたいと考えています。福井(日華化学本社所在地)と埼玉は遠いけれど今回の連携促進研究員を一つのきっかけとして今後の繋がりができてくると嬉しいです。

――連携促進研究員制度を有効に活用するにはどうすればよいでしょうか。

堂前:共同研究や他の連携制度の前段階、呼び水としての機能が連携促進研究員制度には求められていると思います。とはいえ、「何か探して来い」でポンと理研に出向させられるのは、本人にとっては大変だと思います。企業側に明確にやりたいことがあって、理研に来てくれるのが良いかたちではないでしょうか。理研は自由な場所ですので、明確なニーズがあれば、周囲もサポートしてあげることができると思います。

(2011年10月掲載)

第10回 杉山特別研究室

第9回 理研ベンチャー株式会社カイオムバイオサイエンス

第8回 無細胞技術応用研究チーム

第7回 実用化コーディネーター 泉名 英樹 さん

第6回 連携促進研究員 猪爪 優子 さん

第5回 理研ベンチャー新世代加工システム株式会社

第4回 応用質量分析研究チーム

第3回 理研ベンチャーOMケムテック

第2回 次世代ナノパターニング研究チーム

第1回 複合機能発現材料研究チーム