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2013年12月20日

ラン藻を利用したバイオプラスチックの生産

理研No. 08125

発明者

小山内 崇(理研:代謝システム研究チーム/科学技術振興機構:さきがけ研究者)

背景

ラン藻(シアノバクテリア)は、酸素発生型光合成を行う細菌であり、窒素やリンの欠乏時に、バイオプラスチックの一種であるポリヒドロキシ酪酸(PHB)を生産する能力を持っています。ラン藻のPHB生産能力を高めることによって、二酸化炭素、光、水を用いた環境に優しいエネルギー・マテリアルの生産が可能になります。

概要

単細胞性ラン藻シネコシスティス(Synechocystis sp. PCC 6803)という種を中心に研究を進めています。今回、このラン藻のバイオプラスチックと水素の生産能力を増大させる新しい方法を開発しました。

グリコーゲン分解に関与する炭素代謝の制御因子「SigE(シグイー)」を過剰発現させると、グリコーゲンの分解促進、酸化的ペントースリン酸経路の酵素群の増加が見られ、PHB合成酵素の転写量が増加するので、PHBを大量生産することができます。SigEはRNAポリメラーゼシグマ因子の1つで、グリコーゲンからPHBへの代謝経路を統合的に制御しています。すなわち、従来のような代謝酵素のレベルではなく、代謝経路のレベルで改変を行い、PHBの増産を行う方法となります。

ラン藻は、窒素が欠乏すると緑色から黄色に変化します。PHBは窒素欠乏時に細胞内に蓄積されます。凍結乾燥したラン藻細胞から有機溶媒を用いて、1週間ほどかけてPHBを精製・抽出することができます。

ラン藻によるバイオプラスチックPHBの生産の図

図1:ラン藻によるバイオプラスチックPHBの生産

バイオプラスチック(PHB)と水素の生産量の増加の図

図2:SigEタンパク質を過剰発現させると、PHBと水素の生産量が増加する

利点

  • 大気中の二酸化炭素を直接取り込み、光合成反応により、光を直接エネルギー源として利用できる
  • 遺伝子改変が容易であるため、新しいラン藻株を迅速に生み出すことができ、研究の進展が速い
  • 植物に比べて高い増殖性を有し、水圏を利用した物質・エネルギーの生産ができる

応用

  • SigEは、炭素代謝を大規模に改変する因子であるため、他の物質生産への応用が可能
  • 工場などから排出される二酸化炭素の回収と有用物質生産を同時に達成
  • 海洋性のラン藻に応用すれば、海水を利用した物質生産も可能

文献情報

  • 1.特願2013-052208
  • 2.Osanai et al., DNA Research (2013) doi: 10.1093/dnares/dst028
  • 3.Osanai et al., The Plant Journal (2013) 76, 456-465.

関連情報

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