中村特別研究室

研究室プロフィール

光合成の初期過程はMnクラスター錯体によって2分子の水から1分子の酸素が発生する反応である。現在もこの分子レベルの作用機序は依然として未踏のまま残されている。これを量子力学に則って解明し、その原理を用いた新たなナノサイズ電極をデザインし実証する。量子化学および分子科学に加えて、可視化(visualization)と可聴化(sonification)信号処理技術を駆使して攻略する。

概要

 現代文明の究極の課題は、光合成や視物質など生物系で実現されており、人工創造物がまだ到達できていない、美しくかつ高効率の材料とデバイスを手にすることである。その実体は化学的エネルギーを極限的な高効率で力学的エネルギーに変換するナノ構造体である。一方、シリコンテクノロジーに代表される現代の工業製品は、恩恵の大きさをけして忘れてはならないが、エネルギー源は化石燃料であり、部分的には高効率であっても原材料からの精製運搬、高価な精密加工と高精度化のための制御、そして廃棄物処理まで考えると系全体では生体に到底及ばず、排出されたエントロピーの増加という難問を抱えている

 この究極課題に立ち向かう着実な一歩として"光合成を可能にする生体ナノ領域場の研究"という課題を追及する。徹底的に生物に学ぶという基礎研究である。生物を生かし、機能させている原理は、生体複雑系に特有な非決定論的な原理であり、現在の物質文明の人工的機械デバイスを律している決定論的な原理と根本的なところが違っている。生物は構造的な曖昧さやゆらぎを積極的に活用して機能している。機械にとっては構造的なゆらぎはノイズであり、誤差の要因である。今後の環境とエネルギー問題の根本的な解決を目指すなら、35億年以上の進化によって鍛えられた営みという生存実績を持つ生物のこのような原理に学ばねばならない

 近年の単分子レベル計測技術の進歩、カオスやゆらぎ理論の飛躍的進展、計算科学技術の相転移的変容、を鑑み、計算科学と実験科学を融合させ、独自の可聴化信号処理技術を駆使し光合成初期過程の等価回路たる人工的ナノ構造電極の設計を目指す。このような試みは一民間企業や大学の一研究室では想定することさえ不可能である。唯一、理研という「知の結晶化と、結晶化した知の新たな融合」が起こりつつある場においてのみ挑戦することが現実的である。

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