広報活動

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2009年3月31日

理化学研究所

未熟な生殖細胞を駆使し、マウス育種の倍速化に成功

- 哺乳類で最短、一世代44日と従来の半分の日数で世代交代を可能に -

円形精子細胞の顕微授精後、胚移植によって仮親(白いマウス)から生まれた雄マウス(黒いマウス)

手のひらにのるほどの大きさしかなく、江戸時代では愛玩動物として飼育されていたマウスは、ライフサイエンス研究の実験動物の代名詞として知られています。DNA解析が最も進んでおり、特定の病気やがんのモデルなど、さまざまな遺伝子の変異により、毎年数千種の系統が誕生し、研究を支えています。

こうした新たな系統のマウスを、再現性ある実験として使用するためには、変異のある遺伝子以外の遺伝子が均一であることが望まれます。そのため、交配育種を駆使して、一世代当たり3~4カ月かかる世代交代を、数世代から10世代以上繰り返し、トータル1年~3年という長い年月と手間、経費を費やして、実験用に作られています。

マウス精巣中の円形精子細胞

バイオリソースセンター遺伝子工学基盤技術室らの研究グループは、顕微授精技術を使って、マウスの世代交代を、一世代当たり平均44日で達成することに成功しました。この方法を用いれば、従来の世代交代に要する時間を約半分に短縮することができます。

この倍速化技術は、性成熟前のオスから採取した未熟な生殖細胞である円形精子細胞(普通の精子と同じ半数体の染色体を有し、生後22日以降に十分な数が出現する)を、顕微授精で交配させ、産子を最短42日で得ることができる技術です。哺乳類での世代交代の最短記録であり、脊椎動物では幼形成熟魚シラスウオの40日に迫る記録となりました。同研究グループは、標準的な近交系マウスでこの戻し交配を行い、従来1年から3年ほどかかっていた均一化が、106日~190日と大幅に短縮することにも成功しました。

マウスを活用した研究は、精密さと迅速性がますます要求されています。今回の成果は、ライフサイエンス研究を支える重要な技術を開発したことになります。また、自然交配により、長い年月をかけて実施してきた家畜の品種改良にも活用できると期待できます。

理化学研究所
バイオリソースセンター 遺伝工学基盤技術室
室長 小倉 淳郎
Tel: 029-836-9165 / Fax: 029-836-9172