広報活動

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2009年4月15日

独立行政法人 理化学研究所

左右非対称な神経回路の存在を嗅覚系で発見

-匂いの好き・嫌いなど嗅覚と感情とのつながりを探る新たな手がかりに-

単一僧帽細胞の遺伝子工学的標識法による匂い情報伝達様式の解析

私たちは桜の香りに心地良さを感じる一方、焦げ臭さに危険を感じるなど、匂いから「快・不快」、「好き・嫌い」などの感情を抱いたり、過去の記憶を思い起こしたりします。このように嗅覚は、生命を守るために、外界の情報を感知する感覚として研ぎ澄まされてきました。事実、摂食、危険回避、繁殖などに、嗅覚が重要な役割を果たしています。しかし、多種多様な匂いを識別し、匂いの種類・質に応じて適切に処理する、嗅覚系のメカニズムは非常に複雑です。

理研脳科学総合研究センターのシナプス分子機構研究チームらは、モデル動物のゼブラフィッシュの脳の神経回路を緑色蛍光タンパク質で可視化し、複雑な嗅覚系に左右非対称な神経回路が存在することを発見しました。

匂いは、匂いのもととなる分子を嗅覚受容体でキャッチし、区別します。ヒトでは約350種、マウスでは約1,300種、魚でも約200種の受容体遺伝子が見つかっており、個々の受容体は特定の共通構造を持った匂い分子だけ を認識します。この匂い分子の情報は、嗅細胞の神経線維を介して、脳の入り口の「嗅球」と呼ばれる最初の情報処理中枢に伝わります。しかし、匂い情報がどのような神経配線様式で高次中枢へ伝わり、過去の記憶や好き・嫌いなどの感情と結びついているのかは、謎のままでした。

今回発見した、嗅球から感情に深くかかわる手綱核(たづなかく)への直接的な神経接続は、嗅覚と感情のつながりを探る糸口となります。また、手綱核への投射が左右非対称であったことから、右利き・左利きなどの動物行動の左右非対称性を理解する上でも、大きく貢献すると期待できます。

理化学研究所
脳科学総合研究センター シナプス分子機構研究チーム
チームリーダー 吉原 良浩(よしはら よしひろ)
Tel: 048-467-1699 / Fax: 048-467-2306

副チームリーダー 宮坂 信彦(みやさか のぶひこ)
Tel: 048-467-9674 / Fax: 048-467-9689