広報活動

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2009年5月1日

独立行政法人 理化学研究所

タンパク質の架橋反応が細胞死を招き、アルコール性肝障害に

-アルコール性障害の肝臓で繰り広げられる新しい肝細胞死のメカニズムを発見-

アルコール性脂肪性肝炎のモデルマウスと患者の肝組織

百薬の長として親しまれているアルコールも、飲み過ぎると肝臓に脂肪が溜まる脂肪肝、さらに飲み続けると生活習慣病として恐れられている肝硬変と進み、やがて肝がんにつながる可能性もあります。

この過度のアルコール摂取がもたらす、アルコール性肝障害のメカニズムを解明することが、新たな診断や治療・予防に大きく貢献すると考えられています。

基幹研究所分子リガンド生物研究チームは、東京慈恵会医科大学、カルフォルニア大学らと共に、肝細胞の細胞質内で働いている、生体構造の安定化や、アポトーシス(細胞死)に働く酵素「トランスグルタミナーゼ(TG2)」が、過度のアルコール摂取により、細胞核に移動し、遺伝子の発現に欠かせない転写因子Sp1を架橋させ(不活性化させ)、細胞死を引き起こすという病因の新経路を解明しました。

この新経路解明は、野生型マウスとTG2遺伝子欠損マウスの肝細胞を、アルコール処理し、細胞死に至る様子を観測した結果、TG2遺伝子欠損マウスでは細胞死が確認できないことや、野生型マウスでは、TG2が細胞核に集まることを見いだしたことに始まります。核に集まったTG2は、Sp1を標的にして架橋反応させ、Sp1の機能を失わせます。これにより、Sp1が、肝細胞の生死を決定する重要な因子であることを突き止めました。さらに肝細胞増殖因子受容体c‐Metの発現量が、不活性なSp1の増加と共に、低下することもわかりました。

この一連のアルコールによる肝細胞死のメカニズムは、劇症肝炎モデルマウス、アルコール性脂肪性肝炎モデルマウス、アルコール性脂肪性肝炎の患者の肝組織でも確認しました(図)。

新しい肝細胞死の経路の発見と共に、肝疾患の新しい診断法や予防法などの開発に貢献すると期待できます。

理化学研究所
基幹研究所 分子リガンド生物研究チーム
チームリーダー 小嶋 聡一(こじま そういち)
Tel: 048-467-7938 / Fax: 048-462-4675