広報活動

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2009年6月12日

独立行政法人 理化学研究所
独立行政法人 科学技術振興機構

抑制性神経伝達を制御する新たな分子機構を、量子ドットを活用し発見

-シナプスにおける受容体の側方拡散が、GABA作動性シナプス伝達効率を決める-

研究から推測される、抑制性シナプス可塑性の新しい分子機構

美しいものに感動し、新しいことを学び、経験を積んで危機を回避し、練習を繰り返して運動能力を高めるなど、私たちの日常の活動は、私たちの神経ネットワークが、興奮性神経伝達と抑制性神経伝達が絶妙なバランスを保っていることで成り立っています。例えば、新生児の視覚発達の基礎過程である臨界期の開始には、抑制性シナプスの1つである「GABA作動性シナプス」の適所・適量な入力がかかわっています。さらに、GABAA受容体の異常は、てんかん、統合失調病、不安障害、ハンチントン病、薬物依存症など、さまざまな神経疾患を引き起こすことが分かってきています。しかし、このGABA作動性シナプス制御にかかわる分子機構は、ほとんど明らかになっていません。これまでの研究では、興奮性シナプスから得られた知見をもとに、細胞膜に存在するGABAA受容体の総数がシナプス伝達効率を決定している、と考えられてきました(図A)。

脳科学総合研究センター発生神経生物研究チームは、JST、フランスのパリ高等師範学校・INSERMなどと協力し、細胞膜上のGABAA受容体の総数は変化せず、側方拡散によるシナプス内の受容体数の増減が、抑制性の神経伝達効率を制御していることを突き止めました(図B)。この発見は、従来の考えを覆し、シナプス伝達効率の制御に新たな分子機構を提唱するものです。また、神経興奮が過剰になっているてんかん患者の脳で、GABAA受容体の側方拡散が増加している可能性を、世界で初めて示すこととなりました。

今後さらに詳しい分子機構を解明することで、てんかんをはじめとするさまざまな脳神経疾患の治療法の確立に貢献すると期待できます。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 発生神経生物研究チーム
チームリーダー 御子柴 克彦(みこしば かつひこ)
基礎科学特別研究員 坂内 博子(ばんない ひろこ)
Tel: 048-467-9745 / Fax: 048-467-4744