広報活動

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2009年7月29日

独立行政法人 理化学研究所

液体界面の“色”を観る新しいレーザー分光法を開発

-構造の違う分子は界面では“まったく異なる液体”の中にいるように感じていた-

空気/水界面の5種類のクマリン(C-314, C-338, C-6H, C-1, C-110)の傾き角とそれぞれの感じている極性指標

“水と油”、“空気と水”、“油とガラス”など混じりあわない物質同士を隔てる領域は「界面」と呼ばれ、さまざまな機能を発揮しています。この界面の厚さはわずか1nm程度で、分子1~2個相当の非常に薄い領域です。しかし、界面がもたらす機能は、触媒と液体の境界での高効率な化学反応、物質の輸送を担う細胞膜の役割といった基礎科学から、塗料、化粧品、食品などの応用科学でも重要な役割を担っています。そのため、界面にある分子の性質を分子レベルで知ることは大変重要ですが、未だ未解明の部分が多く、最も基本的である分子の電子スペクトル(“色”)を正確に測定することさえとても困難でした。

基幹研究所田原分子分光研究室の研究グループは、界面の電子スペクトルを、選択的かつ精密に測定する新しい方法「電子和周波数発生(ESFG)分光法」の開発に、世界で初めて成功しました。これまでに、界面にある分子の“色” を選択的に観察・計測する手法としては、レーザーを使った第二次高調波発生という方法がありました。しかし、この方法では波長を変えながら何回も測定を繰り返さなくてはならないために時間と手間がかかり、またスペクトルの質も悪いので、界面が一体どのような環境なのか詳しく分からない、という問題を抱えていました。今回開発したESFG分光法は、帯域幅が非常に広い可視・近赤外線を用い、精密な電子スペクトルを一度に短時間で測定できます。

この新しい分光法を活用し、異なる液体の中で違う色を示す5種類の「クマリン色素」の“色”を、水と空気の界面で測定しました。5つのクマリンは分子構造が少し違うだけですが、測定の結果、界面での“色”がまったく違っていることを見いだしました。これは、これらの分子が同じ水と空気の界面で、あたかも“まったく異なる液体”の中にいるように感じているという驚くべき事実を示しています。

ESFG分光法をさまざまな界面に適用すると、謎だらけの界面の様子が観えてくると期待されます。

理化学研究所
基幹研究所 田原分子分光研究室
主任研究員 田原 太平(たはら たへい)
Tel: 048-467-4592 / Fax: 048-467-4539
専任研究員 山口 祥一(やまぐち しょういち)
Tel: 048-467-7928 / Fax: 048-467-4539