広報活動

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2009年8月25日

独立行政法人 理化学研究所
国立大学法人 広島大学

地球の重力がほ乳類の正常な胚発生に必須の可能性を示す

-人類は宇宙空間で繁栄することができるのか-

微小重力環境下での体外受精、初期発生および産仔作出

1969年に人類が初めて月に降り立ってから40年、国際宇宙ステーションに日本の実験モジュール「きぼう」が結合し、宇宙空間に長期間滞在して、さまざまな実験を行える環境が整備されつつあります。人類の宇宙活動は、さらに拡大し、月面基地などの可能性が摸索され始めています。やがて広い宇宙で、地上のように人々が生活する時代がやってくるのかも知れません。

ところが、人類が過酷な宇宙空間で、繁栄し続けることができる確証はいまだ得られていません。魚類や両生類では、宇宙空間での受精や発生など生殖に関する研究が進み、子孫を生み出すことに微小重力は影響しないとされていますが、ほ乳類では、実験を行うことすらままならない状況が続いています。

発生・再生科学総合研究センターのゲノム・リプログラミング研究チームは、広島大学の生体環境適応科学教室と共同で、宇宙空間と同じ微小重力がマウスの初期胚発生を阻害する可能性のあることを発見しました。研究グループは、広島大学が開発した3次元重力分散型模擬微小重力装置(3D-クリノスタット)を使って、スペースシャトル内と同じ10-3Gの環境で、マウスの体外受精、初期胚の培養を行い、さらにメスの子宮への移殖で産仔の作出を試みました。

その結果、受精は正常に起こりましたが、受精卵をそのまま培養していくと、初期胚の成長速度が遅くなり、胎盤側への細胞分化が抑制されることが分かりました。胚移植後の産仔の出産成績も、約半分と大幅に低下してしまいました。3D-クリノスタットの高精度な微小重力環境は米国NASAも認めており、微小重力環境下の宇宙空間でほ乳類が子孫を生み出すことが困難である可能性を示したといえます。確かな実証には、実験環境が整いつつある宇宙ステーションなどでの本格的な実験が必要ですが、宇宙での人類の繁栄にはまだ解決すべき課題がありそうです。