広報活動

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2009年8月28日

独立行政法人 理化学研究所

T細胞の成熟に必須の新規遺伝子「themis」を同定

-ヒトの免疫不全症など、免疫病の機能解明への貢献に期待-

ノックアウトマウス作製による原因遺伝子の確認themisがT細胞の成熟段階に重要な遺伝子であることが確認できた

ヒトは、免疫システムを使って、がんをはじめとするさまざまな病気やウイルス、病原菌など、生体に入り込む異物をキャッチ・除去します。その中心的な役割を担うリンパ球の1つがT細胞です。T細胞は、胸腺の中で未成熟T細胞から成熟T細胞へと分化して作られます。すでに、未成熟T細胞までの分化機構は明らかになりつつありますが、成熟T細胞までの機構はほとんど不明でした。

免疫・アレルギー科学総合研究センターのアレルギー免疫遺伝研究チームは、免疫発生研究チームと協力し、遺伝子上の塩基配列に1塩基の突然変異を引き起こすENUという薬剤を使って、さまざまな変異マウスを作製するプロジェクトを進めています。その過程で、血液中のT細胞が通常の10%と極めて少ない変異マウスを見つけました。このマウスの胸腺の細胞を詳しく調べたところ、T細胞が成熟していく段階に異常があり、胸腺内の成熟T細胞が30%程度に減っていることを発見しました。研究チームは、この変異マウスをSPOTR(スポッター)と命名し、原因となる遺伝子の同定と機能の解明を精力的に展開しました。

遺伝子連鎖解析法という解析法で候補遺伝子を絞り込んだ結果、これまで知られている遺伝子と構造的にまったく異なる新規遺伝子「themis;セーミス」を突き止めました。SPOTRマウスでは、この遺伝子内のたった1個の塩基が変異していたのです。実際に、 themis遺伝子を欠損したマウスを作製したところ、SPOTRマウスと同じ異常現象を観察することができました。つまり、 themis遺伝子が成熟T細胞への分化に深くかかわっていたのです。さらに、themis遺伝子の発現の場所と時期も、胸腺内の分化途上にあるT細胞だけであることも分かりました。このthemis遺伝子の役割を明らかにすることで、ヒトの免疫不全症など、厄介な免疫病の機能解明に貢献すると期待できます。

理化学研究所
免疫アレルギー科学総合研究センター
免疫発生研究チーム
チームリーダー 河本 宏(かわもと ひろし)
Tel: 045-503-7010 / Fax: 045-503-7009

アレルギー免疫遺伝研究チーム
チームリーダー 吉田尚弘(よしだ ひさひろ)
Tel: 045-503-7058 / Fax: 045-503-7057