広報活動

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2009年9月14日

独立行政法人 理化学研究所
国立大学法人東京大学大学院理学系研究科

遺伝情報を正しく読み解くための新規な制御機構を解明

-転移RNAの正しい立体構造を保障する酵素が存在-

tRNAの成熟化プロセスとaTrm5によるtRNAのL字型構造のチェック機構

生体を構成し、ほとんどの生命現象をつかさどるタンパク質は、生命の本質である遺伝情報に基づいて合成されています。そのメカニズムは、転移RNA(tRNA)と呼ばれる一群の分子が、遺伝情報である核酸配列(DNA)の情報を、タンパク質を構成するアミノ酸へと変換する反応として知られています。tRNAは、前駆体tRNAとして生成され、その後、さまざまな酵素がかかわる複雑な成熟プロセスを経て、初めて機能を持つようになります。成熟化したtRNAは、L字型の立体構造を持ち、L字の一方の端で遺伝情報を解読し、もう一方の端で対応するアミノ酸を結合させます。しかし、安定したL字型構造を形作り、遺伝情報を正確に解読するtRNAを生成する成熟化プロセスが、どのような機構で制御されているのかはナゾのままでした。

生命分子システム基盤研究領域と東京大学大学院生物化学専攻の研究グループは、 tRNAのL字型構造が正しく構築されていることを見極めた上で、遺伝情報の解読が進行する制御機構の存在を発見しました。不完全な立体構造を持つtRNAは、遺伝情報を正しく解読することができず、誤ったタンパク質を生成することが知られています。 今回、tRNAの成熟化にかかわる酵素「aTrm5」とtRNAとの複合体の立体構造を決定し、それを解析したところ、aTrm5は、tRNAに遺伝情報の解読を促進する修飾を導入するというこれまでに知られた機能だけでなく、 tRNAのL字型構造の完成を確認する機能を持つことが分かりました。これは、正確な遺伝情報の解読を保障するまったく新しい制御機構で、 tRNAがかかわる疾患メカニズムの解明にも貢献すると期待できます。

理化学研究所
生命分子システム基盤研究領域 領域長
国立大学法人東京大学大学院理学系研究科
生物化学専攻 教授
横山 茂之(よこやま しげゆき)
Tel: 045-503-9196 / Fax: 045-503-9195