広報活動

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2010年1月27日

独立行政法人 理化学研究所

脳発達の「臨界期」が終了した後でも変化する神経細胞群を発見

-脳には、「臨界期」の常識を覆し、成熟期に達しても可塑性を示す細胞がある-

二光子励起カルシウムイメージングの方法(左上)と結果の一部

D・H・ヒューベルとT・N・ウィーセルは、1960年代に、生後初期の子ネコの片目を一時的にふさぐと、大脳皮質視覚野の神経細胞がその目に反応しなくなり、弱視になることを発見しました。この現象は、生後の特定の期間に限られており、このような変化を示す脳の発達期を「臨界期」と呼んでいます。「臨界期」を過ぎると、脳の神経細胞は可塑性を失い、このような脳の変化は起こらない、とされています。臨界期の重要性は、神経科学はもちろん、発達心理学、教育学などさまざまな分野で注目を集め、早期教育の根拠となるなど、影響を与えてきました。

脳科学総合研究センター大脳皮質回路可塑性研究チームは、マウスの片目遮蔽実験で、大脳皮質視覚野の抑制性神経細胞が、「臨界期」を過ぎても、ふさいでおいた目の光刺激に対する反応が悪くなるという可塑性を保持していることを発見しました。一方、興奮性神経細胞は、従来の常識どおり、臨界期を過ぎると可塑性をほとんど失いました。また、抑制性細胞は、両目とも光刺激に対しよく反応する両目反応性であるのに対し、興奮性細胞では片目反応性が顕著であることを突き止めました。抑制性細胞が「臨界期」終了後も変化するという今回の発見は、これまで信じられていた「臨界期」の常識を覆すもので、成人の学習や乳幼児の早期教育の意義を考える場合、参考となる重要な知見となります。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 大脳皮質回路可塑性研究チーム
チームリーダー 津本 忠治(つもと ただはる)
Tel: 048-467-7516 / Fax: 048-467-7504