広報活動

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2011年11月8日

独立行政法人 理化学研究所

遺伝子改変なしにクローンマウスの出生率を10倍高める技術を開発

-畜産、医療、製薬分野への本格導入に期待-

図  Xist遺伝子の発現抑制によって生まれたクローン産子

体細胞クローン技術とは、同じ遺伝情報を持つ「コピー」動物を無限に生産できる技術です。1997年にクローン羊の「ドリー」が誕生したときには、有用品種の増産などへの利用が期待されました。しかし、体細胞クローン動物の出生率はいまだに低く、移植した胚の数%しか産まれないため、普及の大きな壁となっています。

バイオリソースセンター遺伝工学基盤技術室を中心とする共同研究グループは、遺伝子操作を施すことなく、短いRNA鎖(siRNA)を注入して、クローンマウスの出生率を10倍高める技術を開発しました。研究グループは2010年に、性染色体の1つであるX染色体の不活性化が出生率の低下につながっていること、その原因がX染色体上の遺伝子の発現を抑制する Xist遺伝子の過剰な発現であることを突き止めていました。

そこで、遺伝子の欠損や挿入といった遺伝子の改変を行わずに、特定の遺伝子の機能を抑えることができる「RNA干渉法」という手法を使って、クローン胚でのXist遺伝子の一時的な発現抑制を試みました。その結果、 クローン胚の発生能力は大きく改善し、通常の10倍(移植胚あたり12~20%)の効率でクローン産子を作ることに成功しました。さらに、この産子の肝臓での遺伝子発現を網羅的に調べたところ、通常のクローン産子で見られる遺伝子発現の乱れも大幅に改善されていました。

RNA干渉法は、卵子や胚に直接siRNAを注入するという簡便な技術であり、ウシやブタなど幅広い動物の胚にそのまま応用できる技術です。今回の成果をもとに、食肉の増産や絶滅危惧種の保存、生物製剤の生産、医療など、さまざまな分野で体細胞クローン技術の実用化が進むと期待されます。

理化学研究所
バイオリソースセンター 遺伝工学基盤技術室
室長 小倉 淳郎(おぐら あつお)
Tel: 029-836-9165 / Fax: 029-836-9172