広報活動

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2012年1月26日

独立行政法人 理化学研究所

新型インフルエンザウイルス検出に期待の新技術が登場

-独自開発したRT-SmartAmp 法を適用し、迅速かつ高感度の検出が可能に-

「亜」という字は、2番目とか、主たるものに次ぐ、派生した、などの意味をもちます。亜熱帯、亜流、亜種といった使い方をします。主流よりは1段下のというか、少し弱めな感じがしますね。しかし、ウイルスの場合は大違いで「亜型」、「亜種」のほうが強力で始末に負えないようです。免疫もなく、対応するワクチンもないからです。2009年にパンデミック(世界的流行)を引き起こした「新型インフルエンザ2009 pdm A/H1N1」は国内にも広がり、対応に大わらわでした。

新型のインフルエンザが出てきた時に、ウイルスをいち早く検出し判定することが、患者への適切で迅速な治療につながります。そのためには、高速・高感度で検出できる方法が必要です。

オミックス基盤研究領域LSA要素技術開発ユニットは、こうした社会的ニーズに応えてDNA増幅法のSmartAmp法と逆転写酵素反応を組み合わせた「RT-SmartAmp法」を開発しました。鼻腔や気管の分泌液から直接インフルエンザウイルスのゲノムRNAをDNAに変換、増幅して検出するので、検出時間が40分以内と大幅短縮出来ました。また、タンパク質レベルで検出する従来の簡易検査キットと比べて、遺伝子レベルでの正確さとSmartAmp法が持つ優れたDNA増幅能により100倍もの高感度が実現できました。さらにインフルエンザ治療薬の「タミフル」に耐性のウイルスや新型変異ウイルスの検出にも対応可能です。実際の医療現場でのRT-SmartAmp法の有効性を検証するため、千葉県と東京都の医療機関・地域診療所の協力を得て臨床試験を行いました。広く使われている簡易検査キットでは、感度が低く発症から24時間以上経過しないとウィルスが検出できなかったのに対して、 RT-SmartAmp法では高感度かつ6時間~24時間以内で検出できました。

今後も「H5N1亜型」などの新型高病原性インフルエンザ出現が懸念されますが、開発した新しい検出法が早期発見、早期対応に貢献することが期待できます。

従来の簡易検査キットでは52時間経過してもウィルスを検出できなかったのに対し、発熱後11時間でウィルスが検出された。

A: 従来の簡易検査キットでは52時間経過してもウィルスを検出できなかったのに対し、発熱後11時間でウィルスが検出された。

肺のX線撮影では、ウィルス性肺炎の進行を鮮明に示している。

B: 肺のX線撮影では、ウィルス性肺炎の進行を鮮明に示している。

自己免疫性肝炎を患った女性(72歳)は、発熱から11時間後に救急車で国立国際医療研究センターに搬送されました。その際、RT-SmartAmp法で調べたところ、2009 pdm A/H1N1ウイルス感染陽性でしたが(A)、簡易検査キットではA 型とB 型ともにウイルス感染陰性でした。その後、52時間経過しても簡易検査キットでは陰性のままでした。この女性はタミフル投与などさまざまな治療を受けましたが、胸部レントゲン写真(B)が示すように症状は悪化の一途を辿り、残念ながら患者は発熱から52時間後に亡くなりました。しかしながら、 この症例は、RT-SmartAmpの感度が、簡易検査キットよりも大幅に高い事を明確に証明したケースです。

図 RT-SmartAmp法によって自己免疫性肝炎患者からのインフルエンザウィルスを検出した症例

理化学研究所
オミックス基盤研究領域
LSA要素技術開発グループ LSA要素技術開発ユニット
上級研究員 石川 智久(いしかわ としひさ)
Tel: 045-503-9222 / Fax: 045-503-9216