広報活動

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2012年2月9日

独立行政法人 理化学研究所

蛍光顕微鏡を用いず一般の顕微鏡で細胞の蛍光観察に成功

-途上国や教育現場にも先端の蛍光観察技術を提供-

図 蛍光顕微鏡とアダプター付一般顕微鏡で観たマウス胚盤胞の蛍光観察

理研の若山チームリーダーは、毎年ベトナムやタイ、カンボジアの学生に生命科学の研究指導をしています。そのときいつも思っていました。「蛍光顕微鏡があればもっと高度な実験ができるのに…」。生命科学の先端では、蛍光色素で細胞を染めて、細胞内の構造や分子の動きを可視化したり、がん細胞などを識別したりすることが普通に行われています。そのためには、高出力の水銀ランプなどを光源にした高価な蛍光顕微鏡が必要です。しかし、高価なゆえに限られた人だけが持てる道具です。また、高出力の光源は細胞にダメージを与えるため、長時間観察ができない、という技術的な問題も抱えていました。

熱心に普通の顕微鏡を覗いている学生を見てハッと思いつきました。「この顕微鏡は試料に優しい低出力ハロゲンランプを光源に用いている。これで蛍光観察できればいいんだ!」。

研究グループは、一般の顕微鏡の光源下にフィルターを取り付けるアダプターを開発し、マウスの胚を蛍光観察したところ、蛍光顕微鏡によるものと遜色ない鮮明な写真を撮ることに成功しました。また、蛍光顕微鏡では30秒以内で消えてしまう蛍光を、アダプター付顕微鏡では10分以上観察することにも成功しました。さらに、フィルターとアダプターの間に隙間を設けてランプの光が漏れ込むようにし、その光を絞りで調節すると、1つの光源で蛍光だけでなく普通の光の同時観察が可能になりました。蛍光標識した細胞内の器官と、普通の光で照らされた細胞全体を同時に観察することができるため、クローン動物作製に必要な卵子の核だけを除く作業が容易になります。

普通の顕微鏡が蛍光顕微鏡に変わるという今回の成果は、生命科学の発展、中学/高校などの教育現場や途上国への蛍光観察の普及、畜産工学技術の向上などに貢献すると期待されます。

理化学研究所
発生・再生科学総合研究センター
ゲノム・リプログラミング研究チーム
チームリーダー 若山 照彦(わかやま てるひこ)
Tel: 078-306-3049 / Fax: 078-306-3095