広報活動

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2012年3月3日

独立行政法人 理化学研究所

化学固定化したフィーダー細胞がマウスiPS細胞の培養にも適用可能に

-安心・安全・簡便・安価な培養床を開発―

マウスiPS細胞の多分化能

「餌の供給者から看護士さんに」。さて、いったい何のことでしょう?科学の世界では、それまでの常識を変える発見が起こり、材料や手法の性格が変わってしまうこともよくあります。さて、呼び方も変わるのでしょうか?

ES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)といえば、再生医療の救世主として最も注目されている分野です。しかし、多分化能を維持しながら増やす(培養する)のは困難です。培養には、多様な栄養を幹細胞に供給する生きたフィーダー(餌の供給)細胞が必要ですが、調製に手間がかかるうえに、幹細胞にフィーダー細胞が混入して使い物にならなくなる恐れもあるからです。

研究グループは、グルタルアルデヒドやホルムアルデヒドで、マウス由来のフィーダー細胞を思いきって化学固定化(フィーダー細胞は死にます)してみました。これをマウスiPS細胞の培養床として使ったところ、iPS細胞の多分化能を示すタンパク質や酵素の発現があり、培養床として十分な機能を果たすことを確認しました。また、3回再利用しても95%近いiPS細胞が多分化能を保つことも分かりました。固定化しているのでiPS細胞に混入することもありません。

フィーダー細胞を化学固定化してしまうと、「フィーダー=餌の供給者」という面よりも、患者に寄り添ってあれこれ世話をやく「看護士さん」のような面が強くなります。化学固定化したフィーダー細胞は、将来、「ナース細胞」と呼ばれるかも知れません。

今後は、ヒト由来のフィーダー細胞を化学固定化してヒトiPS細胞を培養する、という同種の細胞を用いたより安心な幹細胞培養法の確立を目指していきます。

理化学研究所
基幹研究所 伊藤ナノ医工学研究室
主任研究員 伊藤 嘉浩(いとう よしひろ)
Tel: 048-467-5809 / Fax: 048-467-9300