広報活動

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2012年4月11日

独立行政法人 理化学研究所

脳内遺伝子の発現様式解明に小型のサル「コモンマーモセット」が活躍

-霊長類が高次機能を獲得したメカニズムの解明へ-

海馬における遺伝子発現様式の例

コモンマーモセットというサルをご存じですか?南米産のサルで成体でも300~500gと小型です。1年半から2年で繁殖能力をもち、1度に2~3匹出産します。雌雄の両方で子育てをするというから、雄は今はやりのイクメンということになりますね。この小型サルが、最近、ヒトの脳発生メカニズムの解明するためのモデル動物として注目されています。

従来、ヒト、サルなど霊長類の脳が発生期にどのように形成され機能するかを探るときに使われていたのはマウスです。遺伝子操作が容易なこと、成長速度が速いこと、そして何よりも経済的であることがその理由です。しかし、系統発生的にげっ歯類と霊長類は離れていることや、生理学、解剖学、組織学的にも違いがあるため、マウスを使った研究成果を全てヒトに当てはめるのは困難でした。また、マカクザルなど大型のサルでは、複数の遺伝子の発現を脳の広範囲にわたって調べることは、時間的、経済的な制約がありました。

脳科学総合研究センターの研究者は、コモンマーモセットがヒトのモデル動物として適しているかどうかを検討しました。まず、マウスで脳発生に重要とされ、詳細な発現様式が知られている26個の遺伝子を選び、それらに相当する遺伝子をマーモセットで単離しました。次に標識プローブを作製し、26個の遺伝子が体のどこで発生しているかを直接観察できる「in situハイブリダイゼーション」という染色法を使って調べました。その結果、約1年半という比較的短期間で、大脳皮質や視床などほぼ脳全体で遺伝子発現を確認しました。マウスと同様な発現様式もありましたが、神経軸策投射や神経回路形成を制御するEphA6遺伝子のようにマウスとは異なる発現様式を示す遺伝子も多数ありました。このことは、ヒトのモデル動物として霊長類モデルを用いる重要性を示すとともに、コモンマーモセットがモデルとして有用なことを示しています。

今後、コモンマーモセットと大型のサルを組み合わせて効率的な実験を行うことで、ヒトの脳発生や精神疾患発症のメカニズムの解明、高次機能障害の治療法の確立につながると期待できます。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 視床発生研究チーム
チームリーダー 下郡 智美