広報活動

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2012年4月20日

独立行政法人 理化学研究所
独立行政法人科学技術振興機構

プリオンタンパク質の凝集が出芽酵母の生存に有利に働くことを発見

-プリオンタンパク質の凝集と非凝集で、酵母は環境変化に迅速に対応-

Mod5タンパク質の線維状凝集体の形成

神経変性疾患のクロイツフェルト・ヤコブ病や、牛の病気で脳がスポンジ状になる狂牛病は、脳内でプリオンタンパク質が凝集して起きるプリオン病です。このプリオン病のモデルとして研究に利用されているのが出芽酵母です。これまでに、哺乳動物のプリオンタンパク質と同様に凝集する「酵母プリオン」が7個発見されており、プリオン病の発症メカニズムの解明に役立っています。

2008年、プリオンタンパク質の凝集が遺伝子発現を制御しているという報告がありました。つまり、プリオンタンパク質は病気の原因という負の側面だけでなく、生物の生存や進化に有利に働いている可能性が示されたのです。しかし、具体的な例は見つかっていませんでした。

脳科学総合研究センターの研究者は、約6,000個の遺伝子の中から、8個目となる新しい酵母プリオン「Mod5」を同定することに成功しました。既知の7個の酵母プリオンは、アミロイドと呼ばれる線維状の凝集体を作りやすいグルタミンやアスパラギンに富む配列を持っていますが、Mod5はこの配列を持っていません。それにもかかわらず、Mod5の溶液をかき回すと、線維状の凝集体に変化しました。また、この凝集体を出芽酵母に導入すると、Mod5の凝集体を作り、それによって出芽酵母は抗真菌剤に対する抵抗性を獲得することなどが分かりました。

哺乳動物のプリオンタンパク質もグルタミンやアスパラギンに富む配列を持ちません。このことから、Mod5の詳細な解析は、哺乳動物のプリオン病の感染や発症のメカニズムの解明に役立つと期待できます。また、医療や農業の現場で問題化している薬剤耐性菌の新たな発生メカニズムの解明、抗菌剤の開発・応用にも貢献することができます。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 疾患メカニズムコア タンパク質構造疾患研究チーム
チームリーダー 田中 元雅(たなか もとまさ)