広報活動

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2012年5月24日

独立行政法人 理化学研究所
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公益財団法人 高輝度光科学研究センター

「磁石でない磁気記録」を可能にする新しい記録材料の可能性

-磁化を持たない新しい電子スピン配列を発見-

図:Cd2Os2O7のうちOs原子が作る正四面体だけを抜き出して模式的に示した。四面体には二通りの向きが存在(四面体Aと四面体B)し、Cd<sub>2</sub>Os<sub>2</sub>O<sub>7</sub>の結晶構造において必ず隣同士になるように配置する。例えば、正四面体Aの電子スピンが外向きであれば、隣の正四面体Bは内向きである。これがデジタル的な0を表す。すべてのスピンをひっくり返せば、四面体Aは内向き、四面体Bは外向きとなり、これをデジタル的な1と表す。このように電子スピンの配列を利用してデジタル的な0と1を作り出すことができる。

磁気記憶媒体に磁気のあるものを近づけデータが消えて真っ青になったという経験はありませんか?でも、ご安心を…? 磁気の影響を受けない「磁石でない磁気記録材料」ができるかも知れません。

磁気記録材料には磁石としての性質が必要です。物質中の電子はマイナスの電荷を帯びて自転(スピン)しており、電子のスピンが同じ方向を向くと、その物質は磁石としての性質を持ちます。電子スピンのN極がどちらを向くかでデジタル的な0と1を表します。

理研の研究者らは、人工金属酸化物「Cd2Os2O7」に着目しました。この物質はマイナス52℃以下に冷やすと金属から半導体に変わる面白い物質です。放射光X線を使い、この物質を構成する3つの元素のうち磁性をもつ可能性が高いオスミウム(Os)原子の電子スピン配列を調べました。

その結果、金属から半導体への変化に合わせ、4つのOs 原子が作る正四面体の頂点にある電子スピンの向きが、すべて内向き、あるいは外向きの2通りに並ぶことを発見しました(図)。この配列だと、電子スピン同士が磁性を打ち消し合うため、物質全体としては磁石の性質を持ちません。しかし、2通りのスピン配列があるので、デジタル的な0と1を表現可能で記録材料として利用できます。 Cd2Os2O7を磁性記録材料として使うには低温を保たなくてはならないなど実用化に向けての課題が多いですが、この成果を生かしてCd2Os2O7の特性を詳細に調べ、実用化可能な記録材料やセンサーなどの開発につなげていく考えです。

理化学研究所
放射光科学総合研究センター 利用技術開拓研究部門 量子秩序研究グループ スピン秩序研究チーム
チームリーダー 有馬 孝尚(ありま たかひさ)
専任研究員 大隅 寛幸(おおすみ ひろゆき)