広報活動

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2012年5月25日

独立行政法人 理化学研究所

脳・脊髄形成に必要な神経板湾曲の仕組みを解明

-カドヘリン関連因子「Celsr1」の働きが神経管形成に重要-

神経管の形成過程で神経板が湾曲する様子

脊椎動物の胚の発生過程では1つの受精卵が分裂や増殖を繰り返しながら神経や内臓などの組織、器官へと分化していきます。中でも重要なイベントとされているのが「神経管の形成」です。脳や脊髄などの中枢神経系が形成されるための“儀式”であり、うまくいかないと神経管閉鎖障害という発生異常を引き起こします。

神経管の形成では、まず、胚の背側にできた神経板が内側に湾曲して溝を作り、背側で融合して神経管を作ります。この過程で神経板の細胞は神経上皮細胞に分化し、最終的に中枢神経系となります。これまで、この神経管形成に関わる遺伝子やタンパク質が複数報告され、神経管を正常に閉鎖するには、さまざまな仕組みが必要なことは分かっていましたが、それぞれの関係など全体像はつかめていませんでした。

そこで、発生・再生科学総合センターの研究者たちは、ニワトリ初期胚を使った実験を行い全体の仕組みの解明に取り組みました。その結果、神経上皮細胞の接着部位において、細胞骨格タンパク質「アクトミオシン」が体の中心線に向かって一定方向に収縮し、それによって神経板が湾曲することを発見しました。また、その収縮が細胞同士の接着に必要なカドヘリンの一種「Celsr(セルサー)1」によって制御されていることを突き止めました。セルサー1は体の前後軸に直交する接着面だけに集まり、そこでアクトミオシンの収縮を誘導して神経板を一定の方向に湾曲させていました。

今回の研究で、発生研究のモデル生物であるショウジョウバエで提唱された「局所的な細胞接着部位の収縮が組織全体の変形を引き起こす」という概念が脊椎動物の発生でも当てはまることを証明しました。今後は、この仕組みが哺乳類にも存在するかを明らかにし、形態形成機構の原理についての理解を深めて神経管閉鎖障害のメカニズム解明や医学的対処法開発につなげていきます。

理化学研究所

グループディレクター 竹市 雅俊(たけいち まさとし)