広報活動

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2012年5月28日

独立行政法人 理化学研究所
独立行政法人 科学技術振興機構

免疫応答を抑える新たな分子メカニズムを解明

-補助刺激受容体PD-1がミクロクラスターを形成することを発見-

PD-1ミクロクラスターに集まるSHP2

生体を外敵から守る免疫応答システムの中で司令塔的な役割をはたしているのがT細胞ですが、過剰に活性化するとリウマチやアトピー性皮膚炎などを引き起こします。ただ、最近になって免疫応答システムにはT細胞の活性化を調整するメカニズムがビルトインされ、活性化を促す分子である正の補助刺激受容体と、抑制する負の補助刺激受容体とが活性化のバランスをとっていることが分かってきました。

そこで、理研の研究者を中心とした研究グループは、活性化を抑制する負の補助刺激受容体「PD-1」に着目、 PD-1分子のリアルタイムな動きを分子イメージング技術を用いて解析し、「T細胞の抑制メカニズム」を分子レベルで解明することに取り組みました。実験では、擬似的な抗原提示細胞膜である「プレイナーメンブレン」を作ってT細胞を置き、T細胞と膜との接着面で起きる現象を観察しました。

その結果、T細胞が抗原を認識すると、T細胞受容体を核としたシグナル伝達分子で構成される集合体「ミクロクラスター」を形成し、同時にPD-1もミクロクラスターとなり、T細胞受容体と同じところに凝集しました。この時、PD-1は脱リン酸化酵素SHP2をミクロクラスターに呼び込み、この酵素がシグナル伝達分子を脱リン酸化してT細胞受容体からの活性化シグナルを抑制することが分かりました。活性化シグナルを失ったT細胞はプレイナーメンブレンや抗原提示細胞との安定した接着を保持できずに動き回り、T細胞の活性化は中断されました。

この成果は、移植拒絶、リウマチといった自己免疫疾患の過剰な免疫応答の緩和にもつながると期待できます。

理化学研究所
免疫・アレルギー科学総合研究センター
免疫シグナル研究グループ
グループディレクター
斉藤 隆(さいとう たかし)

上級研究員
科学技術振興機構さきがけ研究員
横須賀 忠(よこすか ただし)