広報活動

Print

2012年6月4日

独立行政法人 理化学研究所

抗体を作るB細胞の分化の始まりを分子レベルで解明

-Runx1(ランクス1)転写因子がEbf1遺伝子を活性化してB細胞の分化を促進-

B細胞分化プログラムでのRunx1転写因子の役割

人生の岐路に立って本当に正しい選択ができるどうかは「神のみぞ知る」で、大体が後で振り返って「あの時ああやっていたら」というところではないかと…。

ところで、免疫システムの中には抗体を生むB細胞という細胞があります。この細胞は、骨髄にある血液幹細胞から「B細胞分化プログラム」によって分化・発生することが知られています。しかし、この血液幹細胞がどのようにしてB細胞へ分化する“運命”をたどるのかは、謎のままでした。

免疫・アレルギー科学総合研究センターの研究者は、この運命が与えられる仕組みを分子レベルで解明しようと挑みました。

まず、B細胞へ分化し始めのB細胞前駆細胞で、血液幹細胞の分化に重要とされる「Runx1遺伝子」を破壊したマウスを作製しました。このマウスを解析したところ、脾臓などのリンパ組織でB細胞が消滅することを発見しました。さらに、転写因子として機能するRunx1は、B細胞分化プログラムが動き出すのに必要な3つの遺伝子のうち「Ebf1遺伝子」の発現を調節する領域に直接結合して、Ebf1遺伝子の後付け修飾(エピジェネティック修飾)を変化させてEbf1遺伝子を活性化していることが分かりました。また、Runx1遺伝子の機能を欠損したB細胞前駆細胞で、人為的にEdf1遺伝子の発現を回復させると、B細胞の分化が回復することも見いだしました。これらから、Runx1転写因子によるEdf1遺伝子の活性化が、B細胞分化プログラムの発動に重要なことが分かりました。

さらなる研究を進めてくことで、B細胞分化を制御する薬剤の開発などに役立つと期待されます。

理化学研究所
免疫・アレルギー科学総合研究センター
免疫転写制御研究グループ
グループディレクター 谷内 一郎(たにうち いちろう)