広報活動

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2012年6月15日

独立行政法人 理化学研究所
国立大学法人 東京大学
独立行政法人 科学技術振興機構

失われた電子スピンの情報が、実は保存されていたことを発見

-電子スピンを情報単位とするスピントロニクスデバイスの実用化へ前進-

スピン軌道相互作用下で、電子のスピン(赤色)が不純物(×)に当たって弾性散乱され、向きが次々に変っていく様子。隠れた保存量(青色)は変化しない。

無くしてしまったと思っていたものが、またヒョッコリ出てきたとしたら、少しうれしい気持ちになりますね。

まだ、解明されてないことが多い量子の世界では、さまざまな発見がありますが、基幹研究所の研究チームの成果もその1つです。「失われたとされた電子スピンの情報が、実は隠れた形で保存されていた」という発見です。

10~20年後には集積回路上のトランジスタは原子のサイズになり、半導体エレクトロニクスが技術的な限界を迎えると予想されています。これに代わるのが「スピントロニクス」で、電子スピンの情報を利用して新しいデバイスを開発しようという試みです。ただ、実用化には課題も多く、その解明に向けた研究が進められています。

従来、金属や半導体などの固体中の電子は、電子の軌道運動が生み出す磁場とスピン運動が生み出す磁気モーメント(磁気の方向性)で起きるスピン軌道相互作用や、固体中の不純物などとの衝突によってスピンの向き(スピン情報)が消失してしまうと考えられていました。

研究チームは、スピン軌道相互作用を複数種の磁場の概念を用いて表現し、理論的に解析したところ、消失した電子スピンの情報は「隠れた保存量」として保存されている可能性があることを見いだしました。さらに、これをコンピューター上で再現して調べたところ、初めにあったスピン情報(スピンの向き)は、理論の通りに保存されていることを確認しました。また、この保存量はスピン軌道相互作用を弱くすると、穏やかに元のスピンに戻り復元できることも理論的、数値的に証明しました。

この成果は、スピントロニクスデバイスの実用化のための問題解決につながり、従来のエレクトロニクスの限界を超えた新デバイスの創出につながります。

理化学研究所
基幹研究所 強相関理論研究チーム
チームリーダー 永長 直人(ながおさ なおと)