広報活動

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2012年7月11日

独立行政法人 理化学研究所
国立大学法人 東京大学

金属と絶縁体が入り混じる物質で電子応答の測定に成功

-相分離構造を利用した次世代メモリやセンサの実現に期待-

相分離状態の概念図

同一人物が善・悪2つの人格を持つというテーマで演じられたのが、ミュージカル「ジキル博士とハイド氏」ですが、物質の中にも全く正反対な性質を併せ持つものがあります。特殊な構造を持つマンガン酸化物では、電子が自由に動き回ることができる金属状態と、逆に電子が反発し合い電荷が整列した絶縁体状態の2つの状態が安定的に共存する「相分離」という性質を持ちます。

相分離状態では、わずかな電場や磁場、温度の変化によって物質全体の電子状態を切り替えて、金属から絶縁体、絶縁体から金属に変化させることができます。この性質をうまく使うことで新しいデバイス開発につながると期待され、研究開発が活発に行われています。

しかし、相分離状態では電場を加えたときに、金属領域を電子が通るため「もれ電流」が発生し、相分離状態の電子の挙動を正確につかめせん。また、メモリやセンサの性能の重要な要素の1つに電子の応答速度がありますが、相分離状態では平均化された応答特性しか得られませんでした。

基幹研究所の研究者を中心とする研究グループは、相分離状態を示すマンガン酸化物の薄膜をチタン酸ストロンチウムの基板上に接合したものを作製しました。この接合界面には電子や正孔(キャリア)が存在しないキャリア空乏層という層が形成され、もれ電流を防ぐバリアになりました。この接合に交流電場を加えて電場の周波数に対する静電容量の変化を詳細に調べました。

その結果、相分離状態において「金属領域」と「絶縁体領域」、および2つの領域の界面からの電子応答をそれぞれ分離して測定することに成功しました。相分離の領域のサイズや構造を作り込んでいくことで、電力消費が少なく高速動作が可能な不揮発性メモリや磁気センサの実現が期待できます。

理化学研究所
基幹研究所 交差相関超構造研究チーム
チームリーダー 川崎 雅司(かわさき まさし)
研究員 中村 優男(なかむら まさお)