広報活動

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2012年8月20日

独立行政法人理化学研究所

「第二の脳」と呼ばれる腸管神経系が形成される機構をマウスで解明

-腸管神経系の発生と病気の概念を覆す、腸管神経前駆細胞の近道移動を発見-

 大腸神経系を構成する細胞の移動経路

小腸や大腸などの壁には神経があることをご存知ですか?ヒトの体をちくわに例えると、トンネルの入り口が口、続いて食道から胃、小腸、大腸を経て出口が肛門になります。このトンネルの長さは数メートルにも達し、全長にわたって網目状のネットワークを張りめぐらしているのが「腸管神経系」です。腸管の動きや分泌、血流の調整に欠かせない神経系で、脳からの指令がなくても腸管の機能を調節することから、「第二の脳」とも呼ばれています。

腸管神経系は、胎児のとき、迷走神経堤細胞という細胞が咽頭・食道の壁に侵入して腸管神経前駆細胞になり、食道から肛門の方へと一方向に移動しながら増殖・分化し、ネットワークを作っていくと考えられていました。しかし、この移動の過程では腸管自体も形を大きく変えて成長します。従って、腸管の成長の変化に対応しながら、本当に一方向の移動だけで神経系が腸管壁を覆うことができるのか、謎のままでした。

発生・再生科学総合研究センターの研究者らは、紫外線照射で色が変わる蛍光タンパク質を腸管神経前駆細胞で発現させた遺伝子改変マウスを作製し、この細胞が腸管壁を移動していく様子をライブセルイメージングで観察しました。その結果、小腸と大腸が血管をはさんで平行に並ぶ胎令11日ごろに、血管組織(腸管膜)を横切って小腸から大腸へと“近道移動”する細胞集団を見つけ、この細胞集団が大腸の腸管神経系を構成する主要な細胞であることを突き止めました。また、マウスが近道移動の障害を引き起こすと、先天的に腸管神経系が形成されない「ヒルシュスプルング病」に似た神経欠損を誘導する可能性も見いだしました。

今回の発見は、これまでの腸管神経系発生の概念を覆すだけでなく、ヒルシュスプルング病の発症メカニズムの解明にも貢献するものと期待できます。

理化学研究所
発生・再生科学総合研究センター 神経分化・再生研究室
研究室長 榎本 秀樹(えのもと ひでき)