広報活動

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2012年9月5日

独立行政法人理化学研究所

鳥類の気圧検知器官「傍鼓膜器官」の進化的由来を解明

-傍鼓膜器官は軟骨魚類の呼吸孔器官に由来する-

 傍鼓膜器官は独自の神経細胞を形成する

定説は時に覆ります。生物進化についても同じです。遺伝子解析など新たな実験手法により、全く見えていなかった事実が浮かび上がることがあるのです。公知の定説を鵜呑みにせず、常に新鮮な目で見ることが大切で、教科書さえ疑ってかかるのが、科学者の正しい姿なのです。

鳥類は、鼓膜の近くに「傍鼓膜器官」という気圧の変化を検知する器官を持っています。この器官はサメなどの軟骨魚類の呼吸孔器官に構造や機能がよく似ています。進化的由来は明らかにはされていませんでしたが、約30年前のニワトリ胚を用いた組織追跡実験から「傍鼓膜器官は顔面神経の原基(組織や器官の基)から形成され、魚類の呼吸孔器官との進化的関連性はない」というのが定説でした。

発生・再生科学総合研究センターの研究者らを中心とする国際研究グループはこの定説に疑問を抱き、再検証を試みました。まず、ニワトリ胚の傍鼓膜器官の原基を詳しく観察するため、有毛細胞の形成に関わる遺伝子の発現を解析したところ、その遺伝子は顔面神経節原基とは異なる領域で発現していました。遺伝子を発現する細胞の動きを追跡すると、傍鼓膜器官と神経細胞を形成していました。研究グループはこの領域を「傍鼓膜器官原基」と名付け、傍鼓膜器官を形成するのは顔面神経節原基ではないことを確認しましたさらに、発見された傍鼓膜器官原基の位置が軟骨魚類の呼吸孔器官の原基と一致していることを発見しました。

このことは、進化の過程で失われたと考えられていた魚類の感覚器官が、その機能を変化させて鳥類でも維持されていることを示しています。

理化学研究所
発生・再生科学総合研究センター 感覚器官発生研究チーム
チームリーダー Raj Ladher(ラジ・ラダー)
研究員 Paul O’Neill(ポール・オニール)