広報活動

Print

2012年10月17日

独立行政法人理化学研究所
独立行政法人科学技術振興機構

睡眠・覚醒機能と24時間リズムをセロトニンが束ねる

-睡眠・覚醒のサーカディアンリズム形成機構を神経活動レベルで解明-

ラットのSCNとBF/POAの位置と神経活動の様子

「睡眠のリズムが崩れた」とか、「生活リズムが単調で」とか…。日常の会話でも体調に関わるリズムが話題になりますね。実は、単細胞生物からヒトにいたるまで、24時間周期のリズムが自律的に働いていて、睡眠や覚醒も制御されているのです。これをサーカディアンリズムといいます。ラテン語でサーカは「約」、ディアンは「1日」という意味。それで「約1日のリズム」。そのまんま!分りやすいですね。

これまでの研究で、脳の奥にある視交叉上核(しこうさじょうかく;SCN)が、この24時間周期のリズムの主たる“時計”の役割を担っていることが分かっていました。しかし、SCNからの信号がどこに伝えられ、どのように睡眠・覚醒のリズムを作っているのかについては、よく分かっていませんでした。

脳科学総合研究センターの研究者らは、この課題の解明に取り組みました。実験では、神経伝達物質の1つ「セロトニン」を除去する物質をラットに投与し、数週間、脳の各領域の神経活動を解析しました。その結果、睡眠・覚醒のリズムは崩れても、SCNのサーカディアンリズムは保たれ、睡眠と覚醒に伴う神経活動も正常であることを見いだしました。一方で、睡眠・覚醒を実行する前脳基底部・視索前野(ぜんのうきていぶ・しさくぜんや;BF/POA)という領域の神経活動はサーカディアンリズムを失っていました。この領域のセロトニン受容体を働けなくしたところ、徐波睡眠(ノンレム睡眠)のサーカディアンリズムが消失しました。これらにより、 SCNからの信号は、セロトニンの作用を受けたBF/POA領域に伝えられ、そこで睡眠・覚醒機能と統合して、24時間周期の睡眠・覚醒リズムを作り出していることを発見しました。

この成果は、セロトニンと睡眠リズム障害、うつ病などとの関係理解や治療に役立つと期待されます。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 回路機能メカニズムコア シナプス分子機構研究チーム
宮本 浩行(みやもと ひろゆき)