広報活動

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2012年11月8日

独立行政法人理化学研究所

可搬型のマイクロチップで極微量マイクロRNAを高速検出

-がん、アルツハイマー病、糖尿病などの超早期在宅診断に威力-

50amol とゼロのときのmiRNAの蛍光シグナル。サンプルを滴下後10分経過時の蛍光シグナル。50amolのmiRNAが入ったサンプル(左)では、白い蛍光シグナルを発した。

ポータビリティ(可搬性)というのは、製品が使える範囲を圧倒的に広げます。歩きながら通話できる「ショルダーホン」をNTTが始めたのが27年前の民営化の年です。今やカメラ付きポケットパソコンの感があるスマホの出現を、その当時予想した人はいたでしょうか?また、テープレコーダを屋外に持ち出したのは、あのウォークマンでした。「いつでも、どこでも」のコンセプトは爆発的な反響を呼びました。

さて、そのポータビリティを、がんや糖尿病などの診断装置にも持たせようという試みに基幹研究所の研究チームが挑戦しました。それらの病気を診断するにはマイクロRNA(miRNA)という核酸をマーカー(病気の目印)に使います。ただ、マーカーを検出・診断するには大型の装置と複雑な操作技術が必要で、検出時間も数時間から数十時間もかかっていました。

研究チームは、PDMSというシリコーンゴムの1種が空気を取り込む性質をもっていることに着目し、それをポンプに利用してアトモル(amol)未満の極微量のmiRNAを、20分という短時間で検出できるマイクロチップを完成させました。このチップは、標的となるmiRNAと結合するDNA断片をガラス基板上に固定し、その上に試料の流入口3つと流出口1つ、それらをつなぐ幅100μm、高さ25μmの断面をもつマイクロ流路を刻んだPDMSを載せて作ります。

PDMSが空気を取り込む性質を利用して試料を流入口からマイクロ流路に供給すると、検出したいmiRNAだけがDNA断片と複合体を作ります。そこに蛍光物質と、蛍光物質同士をつなぐ架橋剤を別々の流入口から滴下させると、合流点で蛍光物質がつながり合って蛍光シグナルが増幅されるという仕組みです。

開発したマイクロチップは、「その場」で診断できる超早期診断用チップの実現に向けた第一歩です。また、在宅健診や発展途上国での検診など、機動性を求められる診断にも威力を発揮します。

理化学研究所
基幹研究所 前田バイオ工学研究室
主任研究員 前田 瑞夫 (まえだ みずお)
専任研究員 細川 和生 (ほそかわ かずお)