広報活動

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2012年11月22日

独立行政法人理化学研究所

RIビームファクトリー(RIBF)で18種の新たな核異性体を発見

-次世代RIビーム生成施設を用いた不安定原子核の構造研究へ弾み-

核図表

「核異性体」と聞いて、アッあのことか!と気付く方は相当の科学通です。「放射性同位体(RI)の準安定な励起状態」と言われても、ますます困惑するだけというのが大方の反応でしょう。決して「一番気になる?異性」のことではありません。ただ、核異性体の性質や崩壊の様子を調べることは、核の構造や元素の起源を知る上で非常に大切なことだそうです。

理論的には、地球上に約10,000個の原子核が存在するとされてます。そのうち天然に存在する安定な原子核が約300個で、ほかは不安定な原子核であるRIです。仁科加速器研究センターの研究グループは「不安定な原子核の励起状態の中でも比較的長寿命(準安定)」な核異性体の探索を行い、54個の核異性体の観測に成功、そのうち18個が新しい核異性体でした。

実験は、理研が保有する世界最先端の加速器施設「RIBF」を使って行いました。複数の加速器で多段式の加速システムを構成し、ウランビームを光速の70%まで加速して標的に衝突させ、核異性体を生成しました。この時、核異性体は飛行核分裂と呼ぶ反応によってさまざまな中性子過剰のRIの中に混じっています。この中から目的の核異性体を超伝導RIビーム分離生成装置「BigRIPS」で分離・収集し、測定しました。詳細な解析の結果、これらの核異性体の半減期が数マイクロ秒程度であることや、準安定な核異性体がどのような核の構造に起因して出現するのかなどが分かりました。

発見した核異性体は、中性子過剰領域(核図表の黒い領域の下の部分)の広範囲に位置しています。未知の領域(赤丸部分)でも新しい核異性体が見つかりました。星の生成過程でどういう元素がどう合成されたかを説明する「r-プロセス」の計算にも影響し、元素の起源解明につながると期待されます。

理化学研究所
仁科加速器研究センター 実験装置運転・維持管理室
室長 久保 敏幸
リサーチアソシエイト 亀田 大輔 (かめだ だいすけ)