広報活動

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2013年1月14日

理化学研究所

組織形成における細胞分裂の新しい役割の発見

-球形化する細胞が組織形成の引き金をひく-

分裂期球形化による上皮シートの陥入図

分裂期球形化による上皮シートの陥入

上皮細胞は分裂期に進入すると、細胞分裂に先立って円柱状から球状へと形を変化させる(分裂期球形化)。気管原基の陥入の中心に位置する細胞(緑)の分裂期球形化と同時にシート全体は一気に内部へ入り込んでいく。

複雑な組織や器官をもつ私たちの体も、もとはと言えば1つの受精卵から始まります。受精卵は、細胞分裂を繰り返し、多様な細胞たちができて機能的な組織ができ上がっていくプロセスを発生と呼びます。この発生において重要なイベントのひとつに細胞がシート状の組織になって内側に潜り込む運動(陥入)があります。これをきっかけに2次元だった組織が3次元の複雑な形状へと変化するのです。陥入はすべての高等動物の発生に共通していて、巧妙で神秘的なイベントです。

理研の研究グループは、ショウジョウバエの気管形成の過程を高精度に観察することで、陥入のメカニズムの解明に挑みました。すると、気管原基(気管のもとになる上皮細胞シート)において、細胞が分裂時に円柱状から球形状に形を変えることが、安定していた細胞群のバランスを崩壊させ、一気に陥入を加速させる要因であることが分かりました。また、この球形化だけが陥入の原動力ではなく、分化、増殖に関わるFGFシグナル、EGFシグナルも関与していることが分かりました。 EGFシグナルは、球形化と協調的に作用することで、気管形成が正常に進むために陥入をサポートすること、また、FGFシグナルは、何かが欠けたときでも陥入を進めるためのバックアップ機構として働くことも分かりました。

今回の成果から、生物は、補完的かつ協調的に複数のメカニズムが作用することで安定した形態形成を実現していることが明らかになりました。特に分裂期進入に伴う細胞の球形化が形態形成を積極的に推進するという知見は、発生において細胞分裂が果たす新しい役割の発見といえます。

理化学研究所
発生・再生科学総合研究センター 形態形成シグナル研究グループ
グループディレクター 林 茂生(はやし しげお)