広報活動

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2013年1月15日

理化学研究所

植物生長ホルモン「ジベレリンA1」の唯一未解明の生合成酵素遺伝子を発見

-弱い活性のジベレリンを作るカギとなる酵素遺伝子-

野生型と変異体の様子

野生型と変異体の様子

「弱み」を「強み」に変えるには戦略と戦術が必要ですが、取り巻く環境とニーズが変化すれば強みになることもあります。自動車がそうですね。ガソリンが安かった米国では大型車でブンブンという時代が続き、日本車は売れませんでした。しかし、エコロジーが声高に叫ばれ、燃費の良さや環境負荷の少なさから日本の小型車が受け入れられています。

さて話は変わりますが、植物の生長ホルモンの1つに「ジベレリン」があります。130を超える種類があり、その中の「ジベレリンA1(GA1)」は活性型のジベレリンでイネなど種子植物に多くみられます。しかし、これまでGA1の生合成の仕組みは完全には分かっていませんでした。というのも、 GA1の生合成に関わる酵素遺伝子の中でたった1つ 「GA13-酸化酵素遺伝子」が未解明だったからです。理研の研究グループは、この GA13-酸化酵素遺伝子の発見に取り組みました。

実験では、ジベレリンを不活性化させる酵素をコードする遺伝子と配列が似ている2つの遺伝子から酵素を作り、それらの機能を解析しました。その結果、発現した両方の酵素がGA13-酸化酵素としての能力を持っていることを発見しました。さらに、この2つの遺伝子を欠損させたイネの二重変異体を作り、ジベレリンの含有量を分析したところ、GA1が著しく減少する代わりにGA1より活性が強いGA4が増加していました。これにより、両遺伝子がコードするタンパク質がイネの主要なGA13-酸化酵素と判明し、弱い活性型のGA1と強い活性型のGA4の量を調節していることも分かりました。また、この二重変異体では出穂期に一番上の節間が野生型に比べて長くなり、草丈も高くなりました。イネの茎葉ではGA1が多く存在しており、GA13-酸化酵素は時期と組織に応じてGA1とGA4の量比も調節し生長を最適化していることが分かりました。草丈の適度な抑制は農作物の生産性向上につながる可能性があります。この酵素を使って、弱い活性のGA1を生かす新しい植物生長調節技術の開発が期待できます。

理化学研究所
植物科学研究センター 生長制御研究グループ
研究員 真籠 洋(まごめ ひろし)