広報活動

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2013年1月21日

理化学研究所

ヘルパーT細胞がキラー様T細胞へ変化

-免疫細胞の環境適応能力に通説を覆す新たな視点-

Fate mapping法によるヘルパーT細胞のその後の追跡の図

Fate mapping法によるヘルパーT細胞のその後の追跡

秘められた潜在能力を持つ人が実際にいるものです。平凡なサラリーマンなのですが、音楽をやらせればミリオンセラーで、絵を描けば銀座で個展が開けるほど。そういえば昔、クラーク・ケントという記者がスーパーマンに変身するのをワクワクしながら見た覚えがあります。

 さて、病原体から身を守る免疫反応で重要な働きを担うのがT細胞で、ヘルパーT細胞とキラーT細胞の2つがあります。ヘルパーT細胞は普段はB細胞に抗体を作るように指令を出す役割なのですが、これが一転、病原体に感染した細胞を見つけて殺してしまうキラーT細胞の様に変化することを理研の研究者らが解明しました。

環境が細菌にさらされている「腸内」という限定条件がありますが、いったんヘルパーT細胞になるとキラーT細胞には変化しない、というこれまでの通説を覆す研究成果です。

さらに、腸管内でヘルパーT細胞がキラー様T細胞へと変化するには、ThPOKという転写因子が発現消失することによるもの、という機能変化過程も明らかにしました。この過程では、細胞の性質をコントロールする根本的なプログラムが書き換えられことが分かりました。つまり、ヘルパーT細胞は腸のような環境では、細胞機能のプログラムを再び書き直す能力をもっていることになります。細胞分化プログラムの書き換えはリ・プログラミングと呼ばれ、iPS細胞を作成するときに見られる現象と類似のものと捉えることができるそうです。免疫系の環境適応能力の研究に新たな視点をもたらす成果といえます。

理化学研究所
免疫・アレルギー科学総合研究センター 免疫転写制御研究グループ
グループディレクター 谷内 一郎 (たにうち いちろう)