広報活動

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2013年1月25日

理化学研究所

神経難病ALSとSMAに共通した病態メカニズムを発見

-DNAから成熟RNAを合成するスプライシング反応の破たんが細胞死を誘因-

概念図

脊髄運動神経が変性し脱落してしまう疾患の中に、50~60歳代で多く発症する「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」と、小児期から発症する「脊髄性筋萎縮症(SMA)」があります。いずれも進行が早い難病で、原因の解明と治療法の開発が求められています。

ALS患者の運動神経細胞では、TDP-43と呼ばれるタンパク質が細胞質に異常凝集していることが知られていました。また一部のALSは、TDP-43やFUSという遺伝子の異常で発症するため、これらの異常がALSの発症につながっていると考えられています。一方、SMAの発症の原因は、SMNというタンパク質の減少によると知られています。3つのタンパク質はRNA代謝を制御するという共通の機能を持っていたため、理研の研究者らはALSとSMAに共通する運動神経細胞の変性メカニズムの解明に挑みました。

まず、正常な状態でTDP-43、FUS、 SMNタンパク質の動態を詳細に調べました。その結果SMNとTDP-43、FUSが互いに結合し複合体を作り、核内にあるGemという構造体を形成するのに必要であることを発見しました。さらに、ALS患者の変性した脊髄運動神経細胞では、TDP-43タンパク質の異常によってGemが消失していて、DNAからタンパク質を合成する過程で重要なスプライシング反応を担うsnRNPsが核内に異常に集まることを見いだしました。SMAの原因もsnRNPsの異常であることから、ALSとSMAの運動神経細胞に共通してsnRNPsの異常が見つかり、この異常がスプライシング反応の破たんを起こし、運動神経細胞の変性(死)に繋がることを明らかにしました。

今回の研究で、未だに根本的な治療法が見つかっていない難病のALSとSMAに共通する病態メカニズムを初めて突き止めました。今後、スプライシング反応の破たんがどのように運動神経細胞死を引き起こしているかを検証し、運動神経変性疾患全体の発症メカニズムの解明につなげていきます。

理化学研究所
脳科学総合研究センター 疾患メカニズムコア 運動ニューロン変性研究チーム
チームリーダー 山中 宏二 (やまなか こうじ)
研究員 築地 仁美 (ついじ ひとみ)