広報活動

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2013年1月29日

理化学研究所

タバコを吸いたい気持ちを自己制御する2つの脳部位を発見

-薬物依存の発症メカニズム解明に期待-

喫煙欲求度と自己制御に関わる脳機能活動の図 

喫煙欲求度と自己制御に関わる脳機能活動

知り合いのヘビースモーカーに聞くと、「長時間のフライトでもタバコは我慢できるけど、着陸後に吸えると思うと落ち着かなくなる」といいます。これは、体内のニコチン欠乏のせいだけでなく、欲求行動に関わる脳活動の影響を強く受けているようなのです。

禁煙環境の中での喫煙欲求は、タバコを連想させる視覚刺激で誘導され、欲求の強さはその場でタバコが入手できるのか?喫煙が可能か?などの状況で変化することが知られています。ただ、こうした喫煙欲求が、脳のどこでどのように行われているかの詳細は分かっておらず、理研の研究チームはその解明に取り組みました。

研究チームは、まず喫煙可・不可の状況を実験的に作り、視覚刺激による喫煙欲求に関わる脳の活性化部位を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で調べました。その結果、喫煙欲求の強さでは「眼窩(がんか)前頭皮質」(前頭前野の腹内側部)が、喫煙可能状況に応じた喫煙欲求の促進では「背外側前頭前野」(前頭前野の背外側面)が関わっていることが分かりました。さらに、背外側前頭前野の活動を経頭蓋磁気刺激法(TMS)で人工的に抑制すると、喫煙可・不可の状況に依存した眼窩前頭皮質の活動、つまり喫煙欲求の変化が見られなくなることを発見しました。

これにより、前頭前野での喫煙欲求の処理が、腹側と背側の神経ネットワークの連携によって行われていることが分かりました。このネットワークの強化がタバコや薬物依存症の原因の1つと考えられ、今後、依存症の理解と有効な治療法の開発につながるものと期待できます。

独立行政法人理化学研究所
分子イメージング科学研究センター 分子プローブ機能評価研究チーム
副チームリーダー 林 拓也(はやし たくや)