広報活動

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2013年3月8日

理化学研究所

1匹のマウスから500匹以上のクローン作出に成功

-永続的な優良家畜の大量繁殖実現に第一歩-

再クローンマウスの出産率におけるTSAの影響のグラフ

再クローンマウスの出産率におけるTSAの影響

DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析

DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析(NCが自然マウス、CCがクローンマウス、G20が20代目の再クローンマウス。CCと20Cに大きな差はみられない)

再クローンマウスの初期化完成度

英国で哺乳類初のクローン羊「ドリー」が誕生したのが1997年。画期的な出来事で、大きな反響を呼びました。ただ、体細胞から核移植した卵子のうち出産にいたる割合は低く、残念ながら、西遊記の孫悟空のように自分の毛から分身(クローン)を大量に作るというわけにはいきませんでした。また、クローン動物から再びクローン動物を作り出す連続核移植(再クローニング)が困難で、世代を超えた遺伝情報の伝達は数回で途切れていました。これは、分化した体細胞の核を未分化の受精卵の状態に戻す「初期化」が不完全で、この「初期化異常」が核移植のたびに蓄積し、出産率が低下するためと考えられていました。

理研の研究者らを中心とする研究グループは、2005年にトリコスタチンA(TSA)という薬剤が初期化異常を改善することを発見。それ以来、再クローニングの成功率を高めるために、さまざまな実験条件を最適化しながら、1匹の雌のドナーマウスをもとに連続核移植を続けてきました。現在(2013年2月末)、再クローンマウスは26世代目となり、598匹が誕生しています。出産率は1代目の7%から上昇傾向を示し、最高で15%を記録しました。また、繁殖能力や寿命、細胞年齢の指標となる染色体末端のテロメアの長さにも異常がないことが分かりました。さらに、遺伝子発現の網羅的な解析により、核移植を繰り返しても初期化異常は蓄積しないことも明らかになりました。

再クローン技術の完成度をさらに高めていくことで、優良家畜の大規模な生産や、絶滅危惧種のクローンを安定的に作り出すことが可能になると期待されます。

理化学研究所
発生・再生科学総合研究センター ゲノム・リプログラミング研究チーム
チームリーダー 若山 照彦(わかやま てるひこ)