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2013年3月14日

理化学研究所

糖鎖を分解する酵素「Man2C1」に新たな機能を発見

-Man2C1は酵素活性の他に細胞死抑制機能を持つ-

アポトーシスを引き起こす主要な経路図 

アポトーシスを引き起こす主要な経路

「天は二物を与えず」といいますが、二物も三物ももった魅力的な人がいます。一芸に秀でた人はあらゆる面でレベルが高く、科学者なのに画もプロ級という具合です。そんな例が酵素の世界にもありました。

糖鎖を分解する「Man2C1」という酵素に、酵素としての機能とはまったく別に、細胞死を抑制する新しい機能が見つかりました。

Man2C1は細胞質に存在し、糖鎖とタンパク質が結合した糖タンパク質を分解する酵素です。ところが、いくつかのがんでMan2C1の発現が増加して、腫瘍の増殖や転移と関わりがあるとされ、一方では、Man2C1の発現を抑制するとがん細胞での増殖が止まったり、アポトーシスと呼ばれる細胞死を引き起こすことも分かってきました。しかし、この新しい機能が糖鎖の分解とどう関わるのか、どんなメカニズムで増殖の停止や細胞死にいたるのかは不明なままでした。

理研の研究チームは、Man2C1の発現を抑制したヒトがん細胞由来の培養細胞株を作製し、細胞に起こる変化を観察しました。その結果、CHOPという転写因子の発現が増加し、ミトコンドリアを介してがん細胞のアポトーシスを誘導していることが分かりました。また、この細胞死は酵素としての機能を失わせたMan2C1でも抑制されていました。このことは、Man2C1の酵素としての機能と細胞死抑制機能が、それぞれ独立していることを示します。

今回の研究で、Man2C1の発現を抑制するとがん細胞の増殖や転移を抑えられる分子メカニズムが明らかになりました。今後、Man2C1の細胞死抑制機能だけを無くすことができれば、糖鎖分解機能を保ちながら、がん細胞のアポトーシスを引き起こす新しい抗がん剤の開発につながると期待できます。

理化学研究所
基幹研究所 ケミカルバイオロジー研究領域 システム糖鎖生物学研究グループ 糖鎖代謝学研究チーム
チームリーダー 鈴木 匡(すずき ただし)