広報活動

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2013年4月8日

独立行政法人理化学研究所
タグシクス・バイオ株式会社

人工塩基を用いてDNAの機能向上を証明

-予言から約50年の仮説を世界で初めて実証-

人工塩基を含むライブラリーを用いたDNAアプタマーのSELEX法の図

人工塩基を含むライブラリーを用いたDNAアプタマーのSELEX法

生物の遺伝情報は、アデニン、グアニン、シトシン、チミンという4つの塩基を組み合わせた配列でDNA上に記述されています。DNAは、この4種類の塩基によってタンパク質合成の設計図として機能するほか、抗体や酵素としても機能します。

1962年に米国の研究者A・リッチが「DNAの塩基の種類を増やすことができれば、DNAの情報や機能を拡張できる可能性がある」という仮説を唱えました。これを証明するためには、塩基の種類を増やしたDNAが正確に複製されるような新しい塩基を人工的に作り出す必要がありました。理研は世界的な開発競争の中で、着実に研究の成果を積み上げ、2009年には人工塩基対を作製して、天然型塩基対に近い精度で複製させることに成功しました。今回、その人工塩基をDNAに組み込み、抗体のように標的タンパク質に結合してその働きを制御する「DNAアプタマー」を作製しました。このDNAアプタマーに人工塩基は2、3個しか入っていませんが、天然型塩基だけで構成されるDNAアプタマーと比較して標的タンパク質との結合能力が100倍以上も向上しました。作製には従来のSELEX法を改良した手法を用いました。DNAの疎水性部分と結合しやすくするため、ランダムに配列されたDNA断片に疎水性の人工塩基を組み込んだ5種類の塩基からなるライブラリーを合成し、これを用いて標的タンパク質に結合するDNAアプタマーを作製しました。

今回、DNAに人工塩基を加えることで、DNAの機能が飛躍的に向上するという50年前のリッチの仮説を世界で初めて実証しました。タンパク質結合能力と選択性に富む人工塩基を含んだDNAアプタマーは、従来の抗体技術に代わって診断・検出・医薬品開発分野での応用が期待できます。

理化学研究所
ライフサイエンス技術基盤研究センター 構造・合成生物学部門 生命分子制御研究グループ 合成分子生物学研究チーム
チームリーダー 平尾 一郎 (ひらお いちろう)